一般的に画像生成AIでは実物の人物を描くことはNGだが、Xが実装した生成AI「Grok」では、実在の人物を活用した画像生成が可能だ。結果、亡くなったダイアナ妃と大人になったウィリアム王子がにこやかにほほえんでいるツーショット画像など、趣味の悪い画像が生成されている。故人を生成AIで蘇らせた「生成ゴースト」を活用したサービスも登場しているが、何らかの規制が必要ではないか。(小林 啓倫:経営コンサルタント)
Xがリリースした生成AI
X(旧Twitter)に生成AI「Grok」が実装された。有料会員向けには既に提供されていたのだが、12月10日から無料公開されたのである(ただし、無料会員には一定の利用制限が設けられている)。
さっそくX上では、Grokに「私のポストからイメージ画像を作成してください」というプロンプトを入力して、自分の似顔絵を描かせるという遊びが流行している。以下に掲載するのは、私が自分のアカウント(@akihito)で試してみたものだ。
筆者はXのアイコンに、トラの前でポーズをとるシロクマの写真を使っている。もちろん、それは本物ではなく、以前シンガポールのチャンギ空港に置かれていたトラのパネルの前にシロクマのぬいぐるみを置いて撮影したものだ。
また、筆者はX上で翻訳を手掛けた本の宣伝用ポストを投稿することも多い。そのため上記の画像は、これらの要素を組み合わせて作成したのだろう。実際の筆者の姿とはほど遠いのだが、ネタとして笑える余地があり、確かにこの遊びが流行るのは理解できる。
ただ、このGrokの画像生成機能をめぐって騒動も起きている。それについて話す前に、この機能が持つ「ある特徴」に触れておこう。
いま一般的に使用できる画像生成AIでは、何らかの禁止事項が設けられている場合が多い。それは生成された画像をめぐって、さまざまな倫理的問題が発生するのを回避するためだ。
たとえば、Googleの生成AIでは、最近まで人物を描かせることができなかった。それは過去にこのAIについて、白人の人物を黒人に描く傾向が確認されたなどとして、炎上事件にまで発展していたからである。
さすがに特定のカテゴリーの絵を描かせないという対策を取るところは珍しいが(アダルトコンテンツを例外として)、多かれ少なかれ、利用上の制限が存在するのが一般的だ。
その一つが「実在の人物を描かせない」というものだ。