黒潮町のまちづくりの指針になった砂浜美術館のコンセプト
松本:梅原さんが作った砂浜美術館の企画書には、次のような言葉が書いてありました。
私たちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です。
ものの見方を変えると、いろいろな発想がわいてくる。
4キロメートルの砂浜を頭の中で「美術館」にすることで、新しい創造力がわいてくる。
時代を少し動かせるのは、―人一人の小さな感性の集まり。
この言葉が、私たちのまちづくりの指針になったのです。同じように、黒潮町の未来を示すような言葉を入れたかった。
──「逃げる」という防災の方針について、住民から不安の声は上がらなかったのでしょうか。
松本:それが、住民から松原の向こうに防潮堤を作ってほしいという声は上がらなかったんです。防潮堤を整備したところで、34.4mの津波が来れば意味がないと感じたのだと思います。その中で、「逃げる」を基本方針にしました。(後編に続く)
篠原 匡(しのはら・ただし)
編集者、ジャーナリスト、ドキュメンタリー制作者、蛙企画代表取締役
1975年生まれ。1999年慶応大学商学部卒業、日経BPに入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者、日経ビジネスクロスメディア編集長、日経ビジネスニューヨーク支局長、日経ビジネス副編集長を経て、2020年4月に独立。
著書に、『人生は選べる ハッシャダイソーシャルの1500日』(朝日新聞出版)、『神山 地域再生の教科書』(ダイヤモンド社)、『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』(朝日新聞出版)、『グローバル資本主義vsアメリカ人』(日経BP)、『腹八分の資本主義』(新潮新書)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)、『神山プロジェクト』(日経BP)、『House of Desires ある遊郭の記憶』(蛙企画)、『TALKING TO THE DEAD イタコのいる風景』(蛙企画)など。『誰も断らない 神奈川県座間市生活援護課』で生協総研賞、『神山 地域再生の教科書』で不動産協会賞を受賞。テレ東ビズの配信企画「ニッポン辺境ビジネス図鑑」でナビゲーターも務めた。