インフルエンサーを取り込む手口
八炯はほかにも、様々なメディアでこの件について取材を受けている。
彼の分析では、中共統戦部が台湾インフルエンサーに忍び寄る手口は次のようなものだ。
まず、中国のネット水軍(特定の情報をネットで発信するために雇われた人たち)を利用して、台湾インフルエンサーに対するトラフィックを組織的に増やす。それによって彼らが、企業からの「案件」を受けやすい環境を整える。そこに、中国企業が入り込み、スポンサーシップ料や広告料を支払うのだという。
こうしたお金の流れはビジネスとしては不自然なものではなく合法で、台湾政府としては介入できない。こうして台湾インフルエンサーに支払われる中国側のカネは、いわゆる中国に招待するために支払われる渡航費や接待費以上に大きい。
中国共産党は台湾の各分野のネットインフルエンサーに幅広く手を伸ばし、普段は飲食や観光、娯楽の紹介といった内容を発信させている。だが、選挙のタイミングなど重要な時に、中国に不都合な政治家や候補者のスキャンダルを流させるなどして、台湾世論や選挙の動向に影響を与えようとするのだという。
娯楽内容が中心だったネットインフルエンサーが突然政治的な内容を発信すると、YouTubeなどではフォロワーが離れるという問題もある。だが、中国が統制するプラットフォームは、中国が操るネット水軍によって、そのトラフィックが調節できるので、台湾インフルエンサーにとっては、もはや拒絶することもできない、という。
TikTokを運営するバイトダンスが手がけるショート動画のプラットフォーム・抖音(ドウイン)は撮影が短く簡単で、しかもすぐにお金が入る。そのため、それに慣れてしまうと、だんだんYouTubeなどメーンのチャンネルがおろそかになっていく。結局、中国のネット水軍に養われてしまうようになるのだという。
陳柏源はボイスオブアメリカの取材に率直にこう答えている。