日本では2018年以来、北朝鮮による仮想通貨取引所へのハッキングが絶えない。2018年、コインチェックで当時の相場で580億円相当のコインが消えた事件をはじめ、70億円の被害が発生したジャイプ、2021年100億円の被害を受けたリキッド、2024年480億円の被害が発生したDMMビットコインに対するハッキング攻撃もやはり北朝鮮のハッカー集団であるラザルスが関与していたと見られている。

 米ブロックチェーン分析会社によると、この5年間、北朝鮮が日本をはじめ世界各国で奪取した仮想資産は30億ドル相当に達するという。

国家をあげてハッカー養成

 コンピューター普及率が1%に過ぎない北朝鮮では、「ハッカー育成」はあたかも五輪選手を育てるような体系だった方式で行われているという。

 韓国や米国などのメディアによると、金正恩委員長の夫人の李雪主(イ・ソルジュ)氏の出身校としても知られる平壌の金星高等中学校が北朝鮮ハッカー養成の最前線だ。科学英才学校として有名な金星第1、第2高等中学校は、全国の人民学校(小学校)から数学と科学の秀才たちを選抜し、最高仕様のコンピューターと教育環境を提供し、コンピューター専門教育を受けさせている。

2022年6月、「急性腸内性感染症」が発生した北朝鮮黄海南道海州市に送る薬品を準備する金正恩朝鮮労働党総書記(右)と李雪主夫人(写真:朝鮮中央通信=共同)
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 ここで頭角を現した優秀な学生たちは、金日成総合大学や金策工業総合大学、美林(ミリム)大学などに入学し、サイバー戦士(ハッカー)に成長する。ちなみに韓国政府は2023年からミリム大学と金城中学校に対する独自制裁を行っている。