例えば、袖ぐりのフィット感が悪ければ、物に引っ掛けたりしてミスにつながる。また腰回りの形状を合わせることによって冷気を遮断することができるという。具体的にはジャケットのウエスト部分は絞り、ズボンの腰回りはウェーブ状に作っているという。また、軍服だけでなく下着なども要請に応じて作っている。スポーツ用品よりも頑丈で通気性がよく乾きやすいのが特徴だと話してくれた。
現在も多くの女性の軍人たちは軍から支給される特に女性向けではない軍服の中からサイズが近いものを選んで着用しているらしい。しかしながら、そもそも小さなサイズの物は少ない。
街中のミリタリーショップで自腹で制服や装備品を揃える兵士たち
また、男女問わず軍人は、市中のミリタリーショップでも、自己負担で軍服を含む装備品を購入している。戦時下のウクライナにはミリタリーショップがたくさんある。東部前線地帯では軍人が多いため大型店舗もあった。
ミリタリーショップの商品は多岐にわたる。日本でいうアウトドアショップも兼ねているような状態である。軍服などの衣類はもちろん、自動小銃に使うアクセサリーパーツなども売っている。多くがウクライナ製だった。
ウクライナ製は馴染みがないが、この戦時下で軍人が実際に着用している冬物はきっと暖かいだろう。ヒート下着や薄手のダウンジャケットを中心に自分用の物を探して回った。しかし、残念ながら小さめのサイズの物はなかった。なるほど、女性の軍人は必需品を買うのも大変だろう、と納得した。
ヴェテランカに案内してくれたウクライナ人の友人は祖母の例を出して女性兵士の苦労を熱心に説明してくれた。彼の祖母は衛生兵だった。最も小さいサイズの軍服を探し、袖の長さや、背中部分の余りを自分で縫ってカスタマイズして使っていたという。
特に戦地で任務に就く女性兵士にとって、少しでも身体的負担の軽減になるのはありがたいことだろう。塹壕で長期間過ごすような場面では、寒さや蒸れ、そして汚れとの戦いになる。通気性や、速乾性、保温性などは、パフォーマンスにも精神的ストレスにも大きくかかわる。また、汚れがひどい場合には新しい軍服がすぐに必要になる。
東部で見た女性軍人たちの姿が思い浮かび、需要はかなりひっ迫しているだろうと思った。