強国とその属国が跋扈する世界への逆戻り?
現実を言えば、2023年10月7日のハマスの残虐行為以来、大半の欧州政府はイスラエルを支援するために多くのことをしてきた。
英国とフランスは最近、イランのミサイル攻撃からイスラエルを守るための軍事作戦に参加した。
ドイツなどの一部のEU諸国はイスラエルに強くコミットしているために、ICCの正統性を受け入れているにもかかわらず、袂を分かつ可能性さえある。
だが、大半の欧州諸国が抱く本能は、自国を防衛するイスラエルの権利への支持と、戦争の規則を強制する国際的な法制度への支持とを組み合わせることだ。
ここでの問題は、ガザで戦争犯罪があったか否かという目先の問題にとどまらない。
欧州とアジアの中規模な民主主義国の大半は、強国とその属国が罰せられることなく自由に振る舞える世界に逆戻りする危険性を理解している。
世界貿易機関(WTO)の裁定に抗うといった一部の国際法違反はそれほど恐ろしく聞こえないかもしれない。
だが、ロシアはすでに、国際法に反することが領土の制圧や子供の拉致、民間人の虐殺も意味し得ることを証明した。
ロシアの侵略行為を抑止する国際的な作戦の正統性は国際法に基づいており、プーチンに対するICCの訴追がその中核をなしている。
もしプーチンの起訴を歓迎した米国が今、ICC――およびICCが象徴する国際的な法の秩序――に背を向けたとすれば、ロシアやイラン、北朝鮮に対する制裁を実行するよう懐疑的な世界を説得できる公算は著しく減退する。