中国の各地方で、今年から本格的に出産奨励策をいろいろ打ち出しているが、どうもうまくいっていないようだ。人口減少に歯止めがかからず、地域の共産党委員会などに「パンツを下ろされて月経を確かめられた」といった声がSNSに投稿されている。こうした「月経警察」ともいえる動きや、子供をつくらない適齢期女性に罰金を科すといった政策が実施されるのではといった懸念も広がっている。これらの噂をあながち荒唐無稽とは言い切れない恐ろしさが、今の中国にはある。
(福島 香織:ジャーナリスト)
中国国務院は10月28日、「出産育児支援政策体系を改善し、出産育児に優しい社会建設推進を加速するための若干の措置」を打ち出し、適齢期の結婚と出産および夫婦共同での育児責任を負うように呼び掛け、地方政府に出産育児奨励策を出すように通達した。
国務院当局がメディアに答えたところによると、政府は、経済、サービス、時間、文化の4つの方面から育児・教育コストを引き下げ、出産育児を尊重し応援する社会ムードをつくるように求めているという。
具体的には、産休を現在の98日から158日に延長し、配偶者も15日間の産休を取れるようにすること、妊婦の父母にもそれぞれ5〜20日の休暇を取れるようにすること。3歳以下の乳幼児のパスポート取得、教育費用などを個人の所得税から控除し、その上限も現在の月1000元から2000元とすることなどが盛り込まれた。
また、託児サービスについて地方政府は中央と地方の資金を合わせて、総合サービスセンターと事務的なネットワークを建設し、託児機構に対して適切な運営補助費を手当することが求められた。
この新しい措置は鳴り物入りで発表されたが、専門家に言わせると新鮮味はあまりないという。中国では2015年にそれまで35年続いた一人っ子政策(産児制限)を廃止し、2016年から2人目の出産を認め、2021年には3人目の出産を奨励するようになった。
2022年には習近平が肝煎りで「新婚育(結婚出産育児)文化」政策を推進、出産育児の経済負担軽減政策を推進し、「伝統的手段」で出産育児のしやすい社会ムードをつくるように号令を出した。
2022年から中国計画出産協会は北京市密雲区など20の地方地域をこの「新婚育文化建設テストケース」実施地域に選定、2023年はさらに河北省邯鄲市、広東省広州市などの20地域を追加した。だが、実際のところ、この「新婚育」政策はうまくいっていないようだ。
具体的にみていこう。