リーグもクラブも経営は絶好調

 11月19日に発表された2023―24年シーズンのB1(1部)、B2(2部)各クラブの決算では、B1の3クラブ(A東京、琉球、千葉J)がBリーグクラブとして初めて売上高30億円を突破した。B1の宇都宮、川崎、群馬、SR渋谷、横浜BC、名古屋D、三河の7クラブも20億円を超えた。

 B1とB2の全クラブとリーグを合わせた売上高は、632億円と最高を更新。日本各地には、Bリーグクラブのホームとなる最新のアリーナが続々と開業し、観客数も大幅に増えている。23―24年シーズンのB1とB2をあわせたリーグ全体の入場者数は、前年シーズンから41%増えて429万1816人と、歴代最多を記録している。

 産経新聞によれば、クラブの売上高30億円超は、Jリーグ1部(J1)の一部クラブを上回る水準で、協会副会長でBリーグの島田慎二チェアマンは「バスケット界の尺度で言うと、30億円は大きな節目」とした上で、事業規模も世界トップのNBAに次ぐユーロリーグや中国リーグに「並んだか上回ったかのレベルには既に来ている」と述べたという。

 Bリーグは2026年から最上位カテゴリー「Bリーグ・プレミア」が開幕し、さらなる市場規模の拡大が期待される。

 島田氏は「ビジネスと(選手の)強化」を日本バスケ界の繁栄のための「両輪」と位置づける。実際、両輪の歯車がかみ合うことで現状の好循環を生み出しているといえるだろう。

 ただ、世界最高峰のNBAでプレーする八村選手が見ているのは、さらなる高みである。協会は、八村選手が続投に疑問を呈したトム・ホーバス監督の体制に変更の方針はないとした上で、八村選手の発言についても「選手が自分の考えを言葉にすることは止められない」と容認した。

 一方で、スポーツニッポンによれば、11月21日のアジア杯予選モンゴル戦に向けた前日練習を行った20日、渡辺氏が取材に応じたものの、ホーバス監督や選手に対して八村選手の発言に関する質問を禁止する異例の措置が敷かれたという。厳戒態勢で選手の口を閉ざすことは、はたして良かったのか。完全な事態の収束には、まだ時間がかかりそうだ。

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。