アマゾンはセイムデー・デリバリー・サイトのネットワークを拡大し、配達の迅速化を図っている。この施設は主に大都市近郊にあり、1施設当たりの大きさは大型フルフィルメントセンター(発送センター)の数分の1程度である。アマゾンの電子商取引(EC)サイトで人気のある約10万点の商品を常時置き、一部を数時間で配達している。同社はこの施設とドローン拠点を隣接させることで、1時間以内の配達を実現した。

新開発の障害物検知・回避システム

 アマゾンは13年からドローンを使った配送システム「Prime Air(プライムエアー)」を研究・開発してきた。19年には30分以内に配達できるよう設計した自律飛行型ドローンを披露した。これは大人の身長ほどの大きさで、垂直離陸した後、一定の高度に達すると、回転翼をほぼ垂直に傾けて水平飛行する。安全のために回転翼を覆っているシュラウド(カバー)は水平飛行時に固定翼として機能する。こうしたメカニズムであるため電力効率が高いと、アマゾンは説明していた。

 しかし、その後試験中に何度か衝突・墜落事故を経験するなど困難な状況に直面した。それ以降、試作機の設計・改良を重ね、障害物検知・回避システムを開発した。同システムは水平方向にある飛行機のような移動物体を認識できるほか、煙突のような静止物体も検知する。障害物を特定すると、自動で進路変更し安全に回避する。「ドローンが降下して荷物を顧客宅の裏庭に下ろす際は、周囲に人や動物、障害物がないことも確認する」(アマゾン)

 これにより、24年5月にテキサス州カレッジステーションで目視外飛行の認可を受けた。カレッジステーションではオンライン薬局「Amazon Pharmacy(アマゾン・ファーマシー)」と連携し、処方箋薬のドローン配達も行っている。

 今回、アリゾナ州フェニックスでのドローン配送が実現した。アマゾンによれば、日用品や美容用品、オフィス用品、テクノロジー用品など、5万種類を超える商品が高速配達できるようになった。同社は今後も対象地域を拡大し、全米展開を目指す考えだ。30年までに年間5億個の荷物をドローンで運ぶとしている。