米国の製造業の雇用消滅は中国のせい?
人類という種は、誰の手にも負えないことを誰かのせいにしたがるものだ。
米国で製造業の雇用が消滅していくことについても、国内の消費者や自動化ではなく中国に求める方がはるかに容易だ。
米国の中国に対するモノの貿易赤字は対国内総生産(GDP)比で1%にすぎない。
米国全体のモノの貿易赤字は2008年の世界金融危機直後以降、対GDP比4%前後で推移している。
もしこれをゼロにしたら(米国ではサービス業の競争力とマクロ経済力が貿易赤字を生み出しているため、恐らくゼロにはできない)、モノの国内生産は増えるだろう(恐らくサービス業を一部犠牲にして成り立つ)。
だが、そこで生じる可能性が高いのは、雇用全体に占める製造業の割合がせいぜい10年か20年前の水準に戻ることだ。
実際、ローレンス氏はPIIEのために書いた別の論文で、「米国は中間層を底上げする製造業ルネサンスを経験しているのだろうか」と疑問を呈している。
バイデン政権のインフレ削減法(IRA)が施行されても「非農業部門雇用者数に占める製造業雇用のシェア」はさらに「着実に低下した」だけだった。
恐らく、ドナルド・トランプ次期大統領の関税もその程度の成果しか上げられないだろう。
何と言っても、モノの貿易黒字を計上しているアジアの裕福な国々でさえ、製造業で働く人の割合は減ってきている。