生成AI普及後の社会で活躍できる人材の育成
こうした問題を、私が真剣に考えるようになったのは、前々回稿「本来なら日本の甘利俊一・福島邦彦両氏が受賞すべき今年のノーベル物理学賞」でも触れた甘利俊一先生の存在がとても大きいです。
私たちは甘利先生にご指導いただきながら、現行の算数・数学の学習指導要領の抜本的な再検討、とりわけ「(生成)AIの社会普及以降、どのような教育制度と教材が求められるか」をプロジェクトとして検討しています。
その中で義務教育と正面から向き合うようになって以降のことでした。
中高は一貫校に学び、東大~大学院~フリーランスの時期を挟んで34歳以降は母校で教鞭を執ってきた私は、いわば典型的な「上澄み」だけを対象とする教育に、学生としても教官としても関わってきました。
しかし「全国民の知的水準」を対象に、真剣に原理的に検討すればするほど「上澄み」ではなく「ボリュームゾーン」をどうするか、が決定的に大切であることが明らかです。
この観点から、本稿冒頭の問い、つまり2050年以降、どのような大学・学校が生き残り、どのような学校が自然淘汰されるかを考え、以下では端的に結論だけを記します。
「明治以来の画一的な指導要領を卒業し、AIによる教育支援も活用して、全児童・生徒・学生の『学力多様性』に即したテーラーメイド指導の適切な実現に成功した学校は、2050年以降も存続する可能性が高い」
また、
「旧来の学校・大学の就学イメージに固執し、AIによるきめ細やかな個別指導支援なども遅れ、19世紀然とした画一的な座学などの因襲に縛られ続ける学校は、卒業後の進路開拓などで他校に後れを取るリスクがある」
「今後の少子高齢化過渡期に志願者数が減少、2050年以降存続していない可能性が懸念される」
このように私たちは考えています。こうした詳細については稿を分けることとして、以下では具体的な一例を挙げて考えてみたいと思います。