それは石川県議会でも問題にされたが、担当者は「望ましくはないが違法とまではいえない」と市民にも県議会でも強弁した。
「でも、『ねつ造だ』という批判は効いたようです。県は雨量データが少なかったから(他から)データを流用したんだと言い訳をしていたけど、結局、最新の雨量データを追加して、新しくダム計画を作り直したんです」と、渡辺さんは情報公開の成果の一例を語ってくれた。
一滴も使われない水に膨大な税金
利水計画も同様にいい加減だった。辰巳ダム計画では880万立方メートル(m3)のダム容量のうち240万m3が利水容量として確保されていた。
ところが、金沢市に開示請求をすると、同じ犀川のより上流に完成した県営「犀川ダム」で確保した工業用水(207万トン)を34年間、一滴も使っていないことが判明した。辰巳ダムで確保しようとする利水容量に匹敵するが、その一滴も使わない水に、金沢市は「犀川ダム管理費負担金」の名目で石川県に毎年2000万円を払っていた。34年間で総額3億2200万円だった。しかも工業用水特別会計から出すべきものを一般財源から支払っていることもわかった。
この情報を使って次なる手を繰り出したのは、土木技術者で「犀川の河川整備を考える会」代表の中登史紀(なか・としのり)さんだった。中さんは、金沢市はこの使っていない水利権を、県に返上すべきではないかと公開質問状を出したが、市は、水利権は「市民の貴重な権利であり維持すべきもの」と回答。
そこで、中さんは2001年、これは「不当な公金の支出」だとして、地方自治法に基づく住民監査請求を行った。金沢市監査委員会は、手続き上は問題ないとして中さんの請求を退ける一方で、市に対しては、「本請求における工業用水については、当初の計画と現在までの実績とが乖離している顕著な例である」として、適切に解決するよう「付言」した。