実は、生まれによってある程度決まっている
社会経済的地位(Socioeconomic status、親の職業・学歴・収入などで構成される、以下SESと略記)の高い家庭の子どもたちは高い学力を身に付け、入学難易度の高い高校に入学しやすい。その結果、高校間に出身階層格差が生じる。図は、そのことを如実に示すデータだ。
これは、2015年に行われたPISAという全国調査の結果だが、高校を学力のランクで分けた場合、ランクが上位16%の高校では、両親ともに大卒である生徒が全体の54%を占めていたのに対して、ランクが下位16%の高校では、その割合は12%であった。
各学校における生徒のSESの平均値を「学校SES」と定義するならば、学校の学力に基づくランクと学校SESは、きわめて高い相関関係を示すのである。

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高校には、似たようなSESの生徒が集まるから、階層性のある学校文化が生じる。たとえば、高SES生徒が集まる(つまり学校SESが高い)進学校では、大多数の生徒が「大学進学は当たり前」という意識を持つ。こうした「当たり前」は、目に見えない「隠れたカリキュラム」から育まれる。
SES、あるいは教育格差の視点がないと、学校間の差異は入学時の学力だけで理解されてしまう。実は「生まれ」によって、どの高校に行くのかは、かなりの程度決定されているのだが、高校入試という学力選抜があることで、そうした実態は隠蔽されてしまうのだ。
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