嫁入り道具から注射針

 和歌山県警は当然のことながら、野崎氏の自宅や会社を徹底的に捜索し、交友関係を洗い出した。

 自宅の捜索の際には妻である早貴被告が立ち会った。ガレージにあった真美ちゃんの“嫁入り道具”も調べられた。そこから驚くべき“ブツ”が見つかった。なんと真美ちゃんの荷物の中から注射針が見つかったのだという。

 その時のことを、早貴被告は野崎が経営する酒類販売会社アプリコの番頭“マコやん”にこう話したという。

「自宅脇のシャッター付きのガレージを捜索していた捜査員が、ガレージにおいてあった荷物の中から注射針が入っていた茶色の封筒と小さなビニール袋を見つけたんです。もしかしたら覚醒剤を小分けするパケかも知れない。“あの女”があやしくないですか」

“あの女”とは、もちろん真美ちゃんのことだ。早貴被告は真美ちゃんと面識はなかったが、野崎氏と結婚前提で付き合っていた彼女の存在について耳にしていたのだろう。ただし、野崎氏が亡くなったときに自宅にいたのは野崎氏本人を除けは早貴被告とお手伝いの大下さん(仮名)の2人だけ。まっさきに疑われるのは早貴被告のはずだが、真美ちゃんの荷物から注射針が出てきたのを幸いに、真美ちゃんに罪をなすりつけようとしたのだろうか……。

 実際、真美ちゃんも警察に事情を聞かれたようだ。

 野崎氏が亡くなってしばらく経った6月20日ごろ、マコやんに「私疑われているの?」と電話をかけてきたという。警察から事情聴取されたことで、怯えたような声だったという。

「そりゃあ、真美さんが送ってきた荷物から注射針が出てきたら疑われるのは当然ですよ。それに2000万円もまだ返却されていない。返さないと遺産の相続人から訴えられる可能性もあるのだから返したほうがいいですよ」

 そう伝えたが、その後はプッツリと連絡は途絶えてしまったという。

「真美さんが送ってきた家財道具は二束三文のものばかりで、はっきり言えばガラクタです。一応、“結婚する気がある証拠”として送ってきたにすぎないのでしょう。そんなウソに引っかかって、訴訟をひっこめた社長(=野崎氏)はアホです。真美さんが暮らしていた大阪市内のタワーマンションは賃貸物件だから差し押さえもできない。初めから社長を騙すつもりだったのか……」(マコやん)

「真美ちゃん犯人説」は今ではすっかり消えてしまったが、見つかった注射針は何のためのものだったのかは不明のままだ。そして貸した2000万円も、もちろん返ってきていない。