1.北朝鮮軍兵のロシア派兵情報
米国のジョン・カービー国家安全保障会議戦略広報調整官は、米国の諜報機関の情報として次のような発言をしている。
「北朝鮮兵士は北朝鮮の元山地域からロシアのウラジオストクまで船で移動したと推定している。その後、これらの兵士はロシア東部の複数のロシア軍訓練施設に移動し、現在そこで訓練を受けている」
また、ロイド・オースティン国防長官も「ロシアに北朝鮮軍がいるという証拠がある。彼らが具体的に何をしているのかはまだ分からない」と発言している。
ロシアと北朝鮮は、今年(2024)6月に「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。
その中の第4条には、「露朝いずれかが武力侵攻を受け、戦争状態に陥った場合、遅滞なく、保有するあらゆる手段で軍事的、その他の援助を提供する」と明記されている。
北朝鮮兵のロシア派兵について、ロシアも北朝鮮も否定はしていない。
北朝鮮兵のロシア派兵については、つい数週間前までは噂の域を出ていなかった。
2.兵士の訓練映像から判明するもの
親ロシア派のSNS「Para Pax」に掲載された北朝鮮兵がいる施設と訓練中の写真について、ウクライナ情報局は、信頼性が高い情報(写真)だと言っている。
この写真の内容について分析する(写真1参照)。
①目につくのが緑色の施設だ。左写真の建物の緑色の塀と右写真の建物の緑色の塀が同じだ。この塀は真新しく、内部が見えないように最近設置されたものであろう。
②緑色の塀の内部に北朝鮮らしい兵がいる。彼らは、雰囲気から新兵ではなく古参兵で、下士官か将校だろう。
③その建物と同じ施設内に、国旗などを掲げる3本のポールがある。3本のポールの中央にはロシア国旗が翻っている。ここは、ロシア領土内であり、その中の施設に北朝鮮らしい兵がいる。
④その施設の中で、兵が訓練を行っている。これらの兵は、ロシア人の体形ではなく、北朝鮮兵の体形と見てよい。
兵士は鉄帽を被り、その鉄帽にはゴーグルを付けている。リュックを背負い、ショルダーバッグ(中身はガスマスクか?)を掛け、体には弾倉などを装着し、銃は銃口を下に向けて持っているようだ。
戦うための装備品を持って訓練をしている。おそらく、これらの重量は20キロほどであろう。実際の戦闘では、これほどの重い装備品を持って戦わなければならない。
これらの装備品は北朝鮮軍のものではなく、ロシア軍の装備品だ。
写真1 ロシア領内で訓練中などの北朝鮮軍と見られる兵
米国防相やウクライナの情報局から発せられる情報とこれらの写真から、北朝鮮兵がロシアに派遣されていることは事実と見ていいだろう。