米国が真っ二つに割れたワケ
米国がほとんど真っ二つに割れるこの現象がどのように起きたのかを説明するのは難しい。これまでの理論にはピタリと当てはまるものがない。
例えば、両党の政策の差があまりに小さいからだという説がある。「両党はまるっきり同じだ」というわけだが、ちょっと待ってほしい。
民主党と共和党は人工妊娠中絶、外交政策、さらには2020年の大統領選挙の結果など目に見える事実についてさえ見解を異にしている。
昔は意見の一致がもっと見られた。ケインズ経済学に基づく介入政策や、旧ソビエト連邦の封じ込めなどをめぐっても合意ができた。
候補者自身のスタイルや器(うつわ)が似たり寄ったりだからだという説もあるが、これも疑問だ。
いつでも毎回そうなのか。しかも、今の方が昔よりその傾向が強まっているというのだろうか。
文化のレベルでの大きな変化
そんなわけがない。もし選挙で50対50という接戦が続いているのであれば、そこには何か深い理由がある。
政治ではなく文化のレベルで何かが起こっているのだ。
一つ考えられるのは、宗教や安定した家庭、終身雇用などが勢いを失うにつれて人々が帰属先として政治に目を向けたということだ。
政治学者のリリアナ・メイソン氏は、共和党支持の「レッド・アメリカ」と民主党支持の「ブルー・アメリカ」を「メガ・アイデンティティー」と呼んでいる。
いずれもその人のものの考え方だけでなく居住地、さらには服装や話し方までもあらわにしているという。
アイデンティティーというものが最も機能するのは、同じくらいの規模で正反対の立場を取るライバルがいる時だ。
シェークスピアの「ロミオとジュリエット」に登場するモンタギュー家がキャプレット家を必要としているのと同じだ。
ブルーが絶対に勝てないとしたら、レッドであることは無意味だ。
だから国民は、大きな問題についてはおおむね半分ずつに割れるよう無意識のうちに調整しているというわけだ。