グッドマン選手の「冴えない」発言に猛反発

 オンラインで会見に出席していたグッドマン選手に対し、以前のYouTubeチャンネルで、井上選手が元IBF世界同級王者、TJ・ドヘニー選手にTKO勝利を収めた9月の一戦について「井上は冴えない」と語った真意を問う質問が出た。

記者会見にオンライン参加のサム・グッドマン選手(後方)(写真:共同通信社)

 グッドマン選手は「(井上選手の)他の試合と比べてベストパフォーマンスではなかったという思いも込めて、シャープではなかったとコメントした」と打ち明けた。すぐに「この試合に向けては全く新しい井上尚弥で挑んでくると思うので、過去の試合に関しては考慮に入れていない」と付け加えたが、井上選手にとって看過できない発言だった。

 質疑応答が終わり、司会者が会見を終えようとしたとき、井上選手は「ちょっと、ひと言だけ言いたい」と自らマイクを握ると、「ドヘニー戦が『冴えない』という言葉をもらいまして、それはドヘニーが“塩試合”に徹したからさえない試合になってしまったということで。グッドマンには、ぜひ熱い試合をしてもらいたい。その意気込みで日本に来てもらいたい」と異例のメッセージを送った。

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 9月の試合では実際、ドヘニー選手が消極的な戦いに終始した。さらに7回に腰を痛めて戦意を失うと、自ら戦いをやめて、そのままレフェリーストップで試合が終わった。井上選手はもちろん、派手なKOシーンを楽しみにしていたファンにとっても不完全燃焼の勝利だった。

 パワー重視のドヘニー選手は前日計量から大幅に増量して試合に臨むため、井上選手も過去最高となる7. 4キロの増量で挑んだが、どれだけベストな調整をしても、相手が好戦的に来なければ、試合内容はしぼんでしまう。そのことだけは伝えておきたかったのだろう。

 井上選手は会見後の囲み取材でも「やるなら熱い試合をしたい。(グッドマン選手が)あの試合(ドヘニー選手との一戦)に冴えないという感想を抱いたのなら、同じ戦い方を選択したらその試合も冴えなくなる。自分は倒しにいくし、ヤマ場もつくるようにする。応戦しないのなら、一方的な冴えない試合になる」と釘を刺した。

 その上で、井上選手は、グッドマン選手のスピードを考慮し、自らもスピード重視のスタイルで臨む。