新たなカスタマージャーニーと非対面営業で受注率が飛躍
扱う商品が決まれば、次はカスタマージャーニーの構築である。同社が3Dプリンターの購買までの顧客のカスタマージャーニーを策定していったところ、メルマガや業界サイトなどの非対面領域での情報収集タッチポイントが多いことが判明した(図表10)。そこでいかに顧客の関心を引き出し、購入につなげるかということにフォーカスしたコンテンツ作りに注力をした。
また、顧客のアクセス解析を繰り返したところ「お問い合わせフォーム」での離脱が多かったことが分かった。これを受けて同社はお問い合わせフォームの細部に手を入れて改善を行っていった。
そうした施策は功を奏し、お問い合わせフォームの改善では、離脱を大幅に減少することに成功。さらに、Google 出稿キーワードの絞り込み、Yahoo!のリスティング広告、SEO対策、DSP(DemandSidePlatform/広告効果の最適化を目的とするプラットフォーム)の利用、リマーケティング広告(自社サイトにアクセスしたユーザーに対する広告表示)などを実施し、広告以外の自然検索流入のアクセスは前年比120%に、契約などの成果も前年比130%に増加した。
併せてリアルなセミナーも多数開催し、その際の接客メールの件名や文言、配信タイミングに関しても、複数のパターンを作成しテストを繰り返し、最適な件名、文言、配信タイミングを抽出していった。こうしたデジタルとアナログを融合させた取り組みはうまく回り、同社の顧客接点は増大していった。
デジタルマーケティングで生み出された見込み顧客の情報は、効率よく、高い精度で、タイミングよく営業担当者に渡され、成約へとつながる。時には、営業担当者に情報を引き渡す前段階でインサイドセールス(電話やメールを通じた、非対面の継続的な営業)が行われる。
デジタルマーケティング担当部門が電話などで顧客に情報提供を行い、反応を確認するのだ。たとえばイベントやウェブサイトで獲得した3Dプリンターに興味のある顧客に対して、必要な情報を提供し、その情報に対する顧客の評価を確認してから、営業担当者に引き継ぎ、商談後期の価格交渉までサポートする(図表11)。
このように、カスタマージャーニーに基づいた細やかな施策の見直しを行い、常にテストと検証を重ね、電話などの非対面営業を活用することで、同社の3Dプリンターのウェブ問い合わせからの受注率は、導入前の4倍に増加した。
またビデオ会議システムへの問い合わせは6.4倍に、オンラインで使えるインタラクティブホワイトボードへの問い合わせは3.2倍に、プロジェクターへの問い合わせは1.6倍になるなど、デジタルマーケティング導入前と比較して飛躍的に増加している。