会社員におすすめの所得控除とは

●小規模企業共済等掛金控除(iDeCo個人型確定拠出年金)

 iDeCoは、毎月一定の掛金を支払って自分で商品を選んで運用し、資産を増やす制度です。運用の結果得られたお金は原則60歳以降に受け取ります。iDeCoで積み立てた掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除という所得控除の対象となります。それによって、毎年の所得税や住民税を減らすことができます。

 iDeCoの掛金は毎月最低5000円からで、1000円単位で増額できます。一方、掛金の上限は働き方や企業年金の有無などで変わります。

 会社員の場合、毎月の掛金の上限は、

・企業年金なし:月額2万3000円(年額27万6000円)
・企業型DC(企業型確定拠出年金)のみあり:月額2万円(年額24万円)
・確定給付型企業年金あり:月額1万2000円(年額14万4000円)
 ※2024年12月から月額2万円(年額24万円)になる予定。

 となっています。

●生命保険料控除

 生命保険に加入している場合、1年間に支払った保険料も所得控除の対象になるため、税金を安くするのに役立ちます。生命保険料控除の対象になる保険料には、

・一般生命保険料(死亡保険など)
・介護医療保険料(医療保険・がん保険・介護保険など)
・個人年金保険料(一定の条件を満たす個人年金保険)

 があります。

 2012年1月1日以降に契約した保険(新契約)の生命保険料控除を全額利用すると、所得税で12万円、住民税で7万円が控除されます。

●医療費控除・セルフメディケーション税制

 医療費控除は、1年間に負担した医療費が多くなったときに、確定申告することによって節税できる制度です。医療費控除の控除額は、次の計算式で求めます。

【医療費控除の控除額】
・所得200万円以上の場合
(1年間の医療費の合計額-保険金や公的給付の補てん金額)-10万円
・所得200万円未満の場合
(1年間の医療費の合計額-保険金や公的給付の補てん金額)-所得額の5%
 ※上限200万円

 1年間の医療費の合計から、医療保険などから受け取ったお金を引いた額が10万円超(所得200万円以上)・所得額の5%超(所得200万円未満)の場合、医療費控除が受けられます。

 また、「年間の医療費が10万円もかからない」という方は、セルフメディケーション税制の対象になるかもしれません。セルフメディケーション税制は、薬局やドラッグストアで対象の市販薬(OTC医薬品)を購入したときに、確定申告することで節税できる制度です。

 セルフメディケーション税制の控除額は、次の計算式で求めます。

【セルフメディケーション税制の控除額】
年間の対象市販薬の購入額−1万2000円
※上限8万8000円

 セルフメディケーション税制では、年間の対象市販薬の購入額から1万2000円を引いた金額が対象になります。上限は8万8000円です。

 なお、セルフメディケーション税制を利用するには、所定の健康診断を受診する必要があります。また、医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか片方しか利用できないため、よりお得なほうを利用しましょう。

 参考までに、会社員の場合、小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)と生命保険料控除は会社の年末調整で手続きを行うことができますが、医療費控除、セルフメディケーション税制は、確定申告をする必要があります。

 では、Yさんが利用できる所得控除を利用した場合、ざっくりどれくらい節税できるのかを見てみましょう。個別ケースによって詳細はかなり変動するため、あくまでも一例と考えてください。