頭の中に作った空白が本番を成功に導く

 プレゼンや会議、面接などでは、どうしても「準備してきた通りに進めよう」「考えていたことを話そう」としたくなるもの。だが、それでは聞き手の心を動かす発表にならないケースが多いと古舘氏は言う。

用意してきたことをそのまま伝えるのは、しょせんは予定調和。その「出来合い」感は受け手にも伝わる。

本当に人の心に響くのは、準備してきたことの外側で飛び出すナマの言葉の真剣味や真実味ではないだろうか。

 古舘氏曰く、「準備をしっかり行うこと」と「準備した内容で頭の中をいっぱいにしておくこと」は違うという。

 ではどうするか。

 まず発表用の資料を徹底的に作り上げ、そこから本当に必要な内容を厳選する。最終的には準備した内容の要点のみをおさえる形でインプットし、頭の中の容量を意識的に開けておく。

 身軽な状態になるまで準備できれば、予想外の事態へ過度に怯えることなく“伝わる”発表ができるようになるという。

アントニオ猪木引退試合で実況する古舘伊知郎さん。右は解説者の山本小鉄さん。(写真:山内猛/共同通信イメージズ) 

準備すれば対人関係もスムーズに

 こうした「準備」が生きるのは、プレゼンや会議のような場面だけではない。

 社会生活を送る中で、ときには苦手なタイプの人を相手にしなければならない場面もある。そんなとき古舘氏は、まず相手のすごい部分や良いところに着目し、対象に興味を持つことから始めるのだという。そして自分と通ずる部分をひとつでも見つけ、対話を成立させる準備をしておく。

仕事をするうえでは、必ずしも相手を好きになる必要はない。

何かしら相手にまつわる情報に興味を持てるところが見つかれば、少なくとも仕事の関係性なら十分良好に保つことができるはずだ。