インテルの道か?危機克服か?

 韓国内では「インテルに続いてサムスン電子も半導体の勝ち組から脱落するのではないかという不安感も強い」という。

 一方で、韓国の産業界には、「サムスンはいつも危機をチャンスに変えてきた。今回も危機感をテコに乗り切るはずだ」という期待がある。

 全永炫副会長も「反省文」で「サムスンはいつも危機をチャンスに変える挑戦と革新、さらに克服の歴史を持っています」と述べている。

 サムスン電子の中堅幹部は「反省文の後半部分が今後のサムスンの復調のカギだ」と明かす。

 全永炫副会長は反省文で「組織文化と仕事をする方法も、もう一度見直し、修正すべき点は修正する。私たちの伝統的な信頼と意思疎通の組織文化を再建する。現場で問題があれば、徹底的に討論をして改善する」と述べた。

 逆に言えば、いまのサムスン電子は、組織が硬直化し、上意下達の垂直的な文化が強くなって現場の問題点が上に届かなくなっているということだ。

 サムスン電子の役員OBは「昔は、上が危機だと言えば週末返上で全社一丸で働き、問題解決に当たった。いまは、週末にも働くのは役員だけ。厳しく指示すれば、若い人は辞めるか、必要なことを何も言わなくなるかだけだ。いまの幹部は大変だ」と話す。

 韓国の大手メディアは今回、かつて先代の李健煕(イ・ゴンヒ)会長が携帯電話機で欠陥品が続いたとき、工場に携帯電話機を積み上げて火をつけて燃やし、従業員一体となって品質向上を図ろうと誓ったという逸話を紹介して、「危機を機会に」などと報じている。

 しかし、果たして今もそういうやり方が通じる時代なのか?

 サムスン電子の決算と、副会長の「反省文」は発表になった2日後の10月10日、ソウルで会った40代のサラリーマンはこう感想を述べた。

「財閥は、良い話があるといつもオーナー会長が発表し、悪いニュースはいつも専門経営者が反省する。会長はどこにいるのか?」

 全永炫副会長の「反省文」には「すべての責任は事業を率いる私たちにある」という。

 進歩系の「ハンギョレ新聞」は「李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生=サムスン電子会長)責任論も」などと報じた。

 危機を克服できなければオーナー会長の責任論も強まるとの報道だ。

 それはそうだが、ちっと先走りすぎでもある。

 何度も繰り返すが、サムスン電子は7~9月期に1兆円もの営業利益を稼いだ。

 高い期待には届かなかったかもしれない。サムスン電子が重大な岐路に立たされていることは分かる。

 超優良企業があっという間に転落する業界であることもその通りだ。

 それでも、サムスン電子の7~9月期決算に対する社内外の反応は、まるで巨額赤字に転落した企業のようである。

 いまからこれでは、万一、圧倒的な利益を稼ぎ出せなくなったとき、韓国社会はサムスンにどう向き合うのだろうか?