株価爆上げの大規模な景気刺激策と関係?

 この席順は習近平の要望なのか? こうした公式の宴席の席順は、気まぐれなどで決めるものではなく、重要な政治的メッセージや意義が含まれているはず。ならば、どんなメッセージが含まれているのか。

 折しも9月に打ち出された大規模景気刺激策と結びつける人もいた。

 9月26日、習近平が急に招集した党中央政治局会議で、経済問題に関する討議が行われたとき、「目下の経済運行上、新たな状況と問題がある」という厳しい認識を示し、大規模な金融緩和と地方財政支援、消費刺激策を支持する方針が打ち出された。

国慶節前夜の晩餐会で、温家宝前首相(右)と談笑する習近平国家主席(写真:AP/アフロ)

 具体的には、人民銀行総裁の潘功勝ら金融・銀行管理当局トップが9月24日の記者会見で述べたように預金準備率や政策金利の引き下げ、金融市場の流動資金1兆元の供給、既存住宅ローンの金利引き下げ、頭金比率の引き下げ、金融機関の資金調達力と株式保有力強化のためのスワップ執行ファシリティ創設など政策ツールの新設。

 さらに25日に国務院が発表した雇用政策12条。消費刺激、地方債務問題のための特別国債2兆元分の年内発行などが含まれる。

 この大規模景気刺激政策パッケージの発表は、折からの米金利引き下げや日本の石破自民党総裁ショックによる東京市場の株価暴落と相まって、外国のヘッジファンドが中国株式市場に一気に流入するきっかけとなった。

 9月23日から27日の上海株式指数は700ポイント急騰し2008年11月以来の週当たりの上昇率を記録。これが本当の意味で中国経済回復軌道の始まりという見方には懐疑的な意見が多いが、少なくとも、これまでの習近平では考えられない、思い切った政策の打ち出し方だと注目を浴びた。

 習近平は三中全会前に、社会科学院経済研究所副所長の朱恒鵬ら中国の経済ブレーンを粛清しており、その理由は彼らが習近平の経済政策に苦言を呈したことだとささやかれていた。朱恒鵬は今年5月以降、その消息が途絶え、いつの間にか経済研究所の名簿から名前が消えている。経済研究所の幹部もかなり入れ替えられたらしい。

 聞くところによると、党中央の御用エコノミストたちはいくつも景気刺激策を習近平に献策したが、三中全会の決定文にはほとんど反映されなかった。その後、朱恒鵬の粛清が明らかになり、習近平は経済回復政策を放棄している、資本主義経済、市場経済と決別するつもりだ、などとささやかれていた。

 そういう噂がたったところで、この大規模景気刺激策が打ち出されたので、習近平の心境になにか変化があったのではないか、という観測が流れた。