なぜなぜ分析を「うまくやる」ためのコツ
1.「なぜなぜ分析」の目的を絞り込み、そこからブレないようにする
「なぜなぜ分析」を繰り返していると、再発防止策の立案が目的だったのに、「究極的には経営層の意識を変えないとダメなんじゃないか」というように、当初の目的から離れた結論に到達したり、話が膨らみすぎたりしてしまうことがあります。
自由な発想も大事ですが、「当初の目的が果たせるのか?」という確認をこまめに入れながら「なぜなぜ分析」を実践しましょう。
2.息苦しくならないように「詰問」しない
「なぜ」を繰り返していると、「なぜ、できない」「なぜ、わからない」「なぜ、失敗した」と詰問されているような気分になり、息苦しさを感じてしまうことがあるかもしれません。「なぜなぜ分析」は、決して個人の責任を追及するための手法ではありません。次のような視点を忘れないでください。
・「何が問題なのか(What)」から始め、改善できる内容に焦点を当てる
・詰問口調を避ける。「なぜ?」ではなくグッド話法の「どうして?」で進める
・個人(自分自身も含め)に対する責任追及は行わない
3.「なぜ?」にこだわらずに、時には「問い」や「思考の起点」を変える
「なぜなぜ分析」だからといって、「なぜ」という言葉にとらわれすぎると、質問が限定されてしまい、原因究明のために問題をどう掘り下げていけばいいのか、その発想が広がらなくなってしまうことがあります。そんな時は次のような工夫をしてみましょう。
・「なぜ」だけではなく「どこが?」「いつから?」「何が?」というように質問の疑問詞を変えてみる。
・思考の起点をずらすのも効果的です。例えば、「ネジのゆるみ」を考えるなら、反対の「ネジの締めすぎ」の視点でも考えてみる。ネジだけでなくボルトやナットなど関連するものにまで発想を広げてみる。
4.「なぜ」に行き詰まったら「空欄のあるロジックツリー」を埋めていく
先ほど紹介した、ロジックツリーのアレンジ活用です。キーワードを書いて、要素分解して並べていくのではなく、空欄のロジックツリーをあらかじめ用意するという順序逆転の方法を行います。
空欄を先に用意すると、ついそれを埋めたくなる、という人間の性質(心理)を利用して、強制的に「なぜ」を発想するのです
さまざまなことに興味津々だった子どもの頃、みなさんにも「なんでなんで」と問いを繰り返し、親や先生を困らせていた記憶はありませんか。「なぜなぜ分析」は、ちょっとしつこいくらいに取り組むことが上達の秘訣です。その過程でロジカルシンキングも身につきます。
ただし、繰り返しになりますが、詰問口調にならないように注意しましょう。詰問口調だとどうしても責任追及の色合いが強くなり、最終的に個人攻撃(ご自身を含む)になってしまいます。口調一つで「なぜなぜ」はメンタルダウンの一因になりえます。
目的はあくまで「カイゼンのための原因追求」、そのことをしっかりと踏まえておいていただきたいと思います。(了)
森琢也(もり・たくや)
株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役。中小企業診断士
2007年明治大学商学部卒後、トヨタグループの大手自動車部品会社(デンソー)に入社。配属された経営企画部署では、製造現場でのトヨタ生産方式の浸透、グループ会社支援など数千億円ビジネスの全体像を学ぶ。事業企画に異動後は、採算改善プロジェクトのリーダーとして、世界5拠点で生産する新製品の採算V字回復などに携わる。
約10年の勤務後、リクルートマネジメントソリューションズに転職し、研修講師の採用・育成を担当。トヨタグループでの経験を活かして、コストと工数を大幅に削減しつつ、3年間で延べ8000人を超える40代以上ハイクラス人材を選考した。
2020年に独立後は経営コンサル事業にて、中小企業向け事業計画作成・実行支援を行い、補助金獲得総額5億円超、採択率90%以上を達成。また、研修事業では、大企業からの直接受注を中心に累計100社以上、参加者数6000人以上に研修を実施。複数の仕事(事業)を同時に取り組んできた経験も踏まえ、組織や個人の仕事の生産性向上を支援している。