避けようがない日本の温暖化、何もしなければ今世紀末の平均気温は「4.5℃上昇」

 日本での異常気象の現状と将来の長期予測を概観していく。文部科学省と気象庁が公表した「日本の気候変動2020」という報告書に、項目ごとの観測事実と将来予測が記載されている。このうち、気温、降水、熱帯低気圧の3項目について見ていこう。

 なお、報告書では確信度がかっこ書きで書かれている。気象や気候の変化の枠組みは複雑であり未解明な点が多いため、科学的に正しいかどうかが断言できない場合が多い。そのときには、専門的な知見をもとに専門家が確信度を記すことで、記述内容の確からしさを表示しているようだ。

【気温について】

●観測事実
・世界平均気温は、工業化以前の水準に比べて上昇している(確信度が非常に高い)。
・日本の年平均気温は、さまざまな変動を繰り返しながら有意に上昇しており、上昇率は 100 年当たり1.24℃である。気温の上昇に伴い、真夏日、猛暑日、熱帯夜等の日数が有意に増加し、冬日の日数は有意に減少している。

●将来予測
・21 世紀末(2076~2095年平均)の日本の年平均気温は、20 世紀末(1980~1999 年平均)に対して全国的に有意に上昇すると予測される(確信度が高い)。全国平均気温の上昇量は、4℃上昇シナリオ(RCP8.5)では 4.5℃、2℃上昇シナリオ(RCP2.6)では 1.4℃である*注
*注:IPCC第5次評価報告書では、気候変動の将来予測を行うために、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスやエーロゾルの濃度をもとに、4つのシナリオが選択されている。このうち追加的な緩和策を取らない想定で今世紀末時点の世界平均気温の上昇が工業化前に比べて4℃に達するものを「4℃上昇シナリオ(RCP8.5)」、おおむねパリ協定の2℃目標が達成されるものを「2℃上昇シナリオ(RCP2.6)」と呼んでいる。この間には、RCP6.0とRCP4.5のシナリオがある。なお、RCPは「Representative Concentration Pathways (代表的濃度経路)」の略で、RCPに続く数値が大きいほど今世紀末時点で地球温暖化を引き起こす効果が大きいことを表している。
・気温の上昇に伴い、日本では多くの地域で猛暑日のような極端に暑い日の年間日数が有意に増加すると予測される(確信度が高い)。2℃上昇シナリオ(RCP2.6)では、4℃上昇シナリオ(RCP8.5)と比べて予測される変化は小さくなるものの、20 世紀末における年々変動の幅を上回る。

 気温については、観測事実として、非常に高い確信度で工業化以前の水準に比べて気温が上昇しているとしている。また、真夏日、猛暑日、熱帯夜等の日数が有意に増加していると記述している。これらは、毎年暑い夏を経験している一般的な人々の感覚と合致していると言えるだろう。

 将来予測で、今世紀末の日本の年平均気温は、高い確信度で20世紀末に対して全国的に有意に上昇すると予測している。全国平均気温は、気候変動問題に関する政策を何も行わない4℃上昇シナリオ(RCP8.5)の場合 4.5℃も上昇するとしている。今世紀末に平均気温が4.5℃も上昇したらどうなってしまうのか、想像すること自体が難しいと言えるだろう。

記録的な酷暑が続く日本の夏(東京・丸の内)記録的な酷暑が続く日本の夏(東京・丸の内、写真:共同通信社)

 なお、気温上昇は低緯度よりも高緯度で大きい傾向にあり、沖縄よりも北海道のほうが気温が上がりやすい。また、海上よりも陸上のほうが上がりやすい。季節ごとには、冬に気温が上がりやすいとされている。

 将来予測によれば、日本でのさらなる温暖化は避けようがないということかもしれない。