国内外の気象機関が定義する「異常気象」とは?

 まず異常気象とは何かを確認したい。実は、国際的に統一された異常気象の定義があるわけではない。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)では「極端な気象現象(Extreme Weather Event)」という用語を使用している。これは、「特定の地域における気象現象の確率分布から見て“まれ”な現象をいう。まれの定義はまちまちだが、通常は10%以下あるいは90%以上の現象を指す(IPCC第3次評価報告書より)。

 WMO(世界気象機関)は、極端な気象現象は国によって目的に応じて異なる定義を用いる可能性があるとして、一般的な原則として事象の強さ(マグニチュード)と時間的な長さと空間的な広がりを考慮して見ていくことが必要としている。その上で、気温(熱波、寒波)、降水、干ばつといった項目ごとに異常気象の定義を設けている。

 一方、日本の気象庁は気温、降水量などの気象要素が過去30年以上にわたって観測されなかったほど著しく高いか、あるいは低い値を示す場合を異常気象と定義付けている。30年に1回以下の出現確率の現象(正規分布すると仮定した場合、平均値から標準偏差の約2.2倍以上偏った現象が発生する確率に相当)としている。

 近年、夏場の連日の猛暑、度重なる豪雨災害など、異常気象や極端な気象が日常化しており、異常に対する感覚はまひしつつあるかもしれない。台風で大雨が降り急傾斜地で土砂災害が発生した、といったニュースが報じられても、その異常さや極端さを感じにくくなってしまっている。そのこと自体が、異常なことと言えるかもしれない。

今夏の暑さについて記者会見する異常気象分析検討会の中村尚会長今夏の暑さについて記者会見する異常気象分析検討会の中村尚会長(写真:共同通信社)