ネタニヤフの瀬戸際政策の危険

 バイデンが最近行った疑わしい賭けは、イスラエルは「紛争を緩和するためにエスカレートする」必要があるというネタニヤフの主張を受け入れたことだ。

 平易な言葉で言えば、ヒズボラに対するイスラエルの軍事攻撃が激しければ激しいほど、イランを後ろ盾にするヒズボラが戦いから下りる可能性が高くなるという意味だ。

 だが、ヒズボラは推計20万発のロケットを含め、膨大な量の武器を持っている。非国家の軍隊としては世界で最も強大な部隊だ。

 レバノンでの民間人の犠牲者が多ければ多いほど、大々的な報復を実行するようヒズボラに迫る圧力が強くなる。たとえ、そうした報復がいずれ自殺行為となるリスクがあるとしても、だ。

 ところが、バイデンは最初の計画に固執している。

 23日にはイスラエルの自制を求めながら、同時に中東における米国の軍事プレゼンスを強化すると発表した。

 後者の対応は、バイデンの要求を無視する追加の保護をイスラエルに与える。

 ハリスの観点に立つと、ネタニヤフの瀬戸際政策は不吉だ。

 ネタニヤフの側近の一部が促しているように、ヒズボラの脅威に対する緩衝地帯を設けるためにイスラエルがレバノン南部の一帯を占領すれば、米国の選挙の形勢が変わる可能性があるからだ。

 石油価格の上昇が米国の消費者心理を冷やし、米連邦準備理事会(FRB)による先日の0.5%の利下げの景気刺激効果が一部帳消しになるかもしれない。