上に立つ者の役割とは何か——。ありとあらゆる組織のチャレンジを左右する最大の要因は、指導者のリーダーシップだろう。プロ野球の監督としてセ・パ両リーグでチームを優勝させ、3度の日本一へと導いた名将・広岡達朗氏が、新著『勝てる監督は何が違うのか』(宝島社)を上梓した。そこで語られている「勝てる監督」はどのような存在なのか。
(東野 望:フリーライター)
弱小ヤクルトを優勝に導き、西武を常勝軍団に育てた広岡氏
広岡達朗氏は、1954年に読売ジャイアンツに入団。現役時代は持ち前の守備力を活かし、遊撃手として活躍した。66年に引退した後はコーチの経験を経て、76年のシーズン中にヤクルトスワローズの監督へ就任。78年には球団史上初となるリーグ優勝・日本一を果たした。
その後、82年から西武ライオンズの監督を務め、4年間で3度のリーグ優勝・2度の日本一へと導いた。その後ライオンズが常勝軍団として一時代を築く土台をつくったとされる。
監督を退いた後は「ご意見番」として、球界を叱咤激励してきた。その姿勢は92歳になった現在も変わらない。そんな広岡氏が考える「勝てるチームの条件」とは何か。
岡田彰布監督に忠告「なぜ、ブルペンを熱心に見ないのか?」
本著において広岡氏は、一貫して「正しいことを正しい方法でやっていれば必ず勝てる」と主張している。
では、正しいこととは何なのか。
それは自分に足りないものやチームに欠けているものを見つめ直し、補うべく愚直に練習を重ねることだ。「すぐに効果があるような特効薬や万能薬はない」というのが広岡氏の考えである。
そもそも、「結果が出ない」「勝つことができない」ということは、必ず何か原因がある。監督はまず、その原因を探ることから始めなければならない。
2023年、岡田彰布監督率いる阪神タイガースが38年ぶりの日本一へと輝いた。岡田氏がオリックス・バファローズの監督を務めていたころ、広岡氏は彼に以下のような忠告をした。
「野球は点をやらなければ勝てる。野球の7割は投手が握っている。なぜ、ブルペンを熱心に見ないのか?」
広岡氏の忠告の後、岡田監督は足しげくブルペンに通うようになったという。そして阪神タイガースの監督に復帰してからも投手力強化に主眼を置いた結果、他球団に攻略を許さず見事日本一を果たした。
自分に欠けているものを受け入れ、素直に実行していくことが成功への近道なのだ。