一度も見破られなかった偽造パスポート

〈その後、私は、金野さんの話を聞くために、池袋の喫茶店に武井さんと一緒に行きました。その喫茶店には金野さんだけでなく、カトウさん(のちに逮捕される岡本吉弘の偽名)も来ていました〉

 その場で、羽毛田は「土地の地主の代わりに土地を売る」ことが仕事で、報酬として100万円を提示されている。

〈私は100万円という報酬に魅力を感じたことなどから、そのようなことが自分にできるのかという迷いはありましたが、その仕事を引き受けることに決め、カトウさんと金野さんに伝えました〉

 すると、カトウがかばんのなかからおもむろに取り出したのは、海喜館の女将の氏名、生年月日、住所などが記された書類や家系図だった。

〈カトウさんは、そのような書類を見せながら、私に海老澤さんに関する情報を説明し、海老澤さんの個人情報を記憶するように言いました〉

〈また、金野さんから、私の顔写真で海老澤さん名義のパスポートを使うということを言われ、証明写真を撮ってカトウさんか金野さんに渡しました〉

〈私は、金野さんから、私の顔写真の入った海老澤さん名義の偽造パスポートを見せられ、「このパスポートが、これからあなたの身分証明書になる。」と言われました。この偽造パスポートは、この後、様々な場面で本人確認のために使いましたが、一度も偽造と見破られることはなく、とてもよくできたものでした〉