3.逆らう者は誰であっても力で押さえつける

 なぜ今、完全武装の護衛兵に囲まれ、金正恩氏に逆らう者はいつでも射殺するぞという構図の写真を公表するのか。

 考えられる理由や背景は、以下のとおりである。

●金正恩氏は、兄は自分に逆らう恐れがあり、叔父は陰で政権転覆を画策していたと考え、自分の兄の金正男(キム・ジョンナム)氏、叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を殺害してきた。

 つまり、今後も誰であっても、金正恩氏の命令に逆らえば、即座に射殺するという意思を示したかった。

●もしも軍がクーデターを起こすようなことがあっても、金正恩氏は完全に守られ、どのようなことをしてでも鎮圧するという意思を示したかったのであろう。

●英紙フィナンシャル・タイムズが報じたところによると、米軍が今、台湾有事に備えて、米海軍特殊部隊シールズ(SEALS)の最精鋭「チーム6」が訓練を重ねているという。

 北朝鮮から見れば、朝鮮半島有事でも同様に訓練している部隊がある。

 米国は斬首作戦という作戦を立案していて、いつでも金正恩氏の暗殺を実行する恐れがある。

 金正恩氏の暗殺は不可能であり、実行すればその部隊が返り討ちに遭うことを見せつけている。

●金正恩氏は、核ミサイルの開発を重視し、人民の生活の安定や経済発展には寄与してこなかった。

 その反動で、北朝鮮人民が金正恩氏に恨みを持ち、暗殺の機会を求めていると内心では思っている。

 また、人民の恨みによる反乱・暴動がこれから起こる可能性や、実際にそのような動きがあるという情報が、政権内部にも報告されているのではなかろうか。

●韓国にいる脱北者たちは、韓国ドラマをインストールしたUSBメモリーや金正恩氏を冒涜したビラを北朝鮮国内に風船で飛ばして送り込んでいる。

 北朝鮮の多くの若者たちは、そのドラマなどを見ているだろう。見た者の中には、逮捕され公開処刑されている者もいるという。

 ということは、若者は韓国が北朝鮮よりも発展し、また自由であることを知り始めたということだ。

 金正恩政権が発表していることは、嘘で見かけだけのものだということを知ってしまった。

 金正恩氏は、そのような若者を恐れている。そして、彼らがいつか自分に刃を向けてくるのに怯えているのだ。