市場は「FRBは0.25%利下げ、日銀は据え置き」を織り込むが…

 まず米国では景気が減速しています。経済指標はいろいろありますが、なかでも重要な雇用統計が驚くほどではないとはいえ悪化しています。景気を刺激するために米連邦準備理事会(FRB)が利下げに踏み切ることは既定路線で、その「幅」が焦点となっています。

 市場関係者の多くは利下げの幅は0.25%になると想定しています。8月初旬には「3倍速」、つまり3倍の「0.75%」もあり得るという見方もありましたが、それに比べると穏やかな利下げです。それでも、これまで急速に利上げをし、誘導目標を5.25〜5.50%に長らく据え置いてきた状況を踏まえれば、大きな金融政策の転換となります。

 一部では「0.50%」の利下げはあり得るともみられています。11月の米大統領選の前に実施される最後のFOMCであるため、バイデン政権が景気を下支えするように政治的圧力をかける可能性もあります。

 一方、日銀については、このタイミングで追加利上げをする可能性は極めて低いでしょう。日本株大暴落の引き金を引いたと言われる前回の利上げの効果・影響をまだ十分に検証できていないなか、追加利上げをすることはないと思われます。

 ただ、9月11日に日銀の中川順子審議委員が講演で追加利上げに前向きな考えを示したとの見方が広がると、円相場は一時1ドル140円70銭台と年初来高値をつけました。マーケットは今回のタイミングでの利上げはないと織り込んでいますが、こうした発言で相場が大きく動くほど神経質にはなっています。

9月4日は1600円超の値下がりとなった。依然として振れ幅は大きい(写真:つのだよしお/アフロ)

 1ドル160円を超えていた状況と比較すると、140円台でもかなり円高になったと感じますが、日銀はまだ円は過小評価されていると考えていると思います。そのため、今回追加利上げをしなくても、日銀政策決定会合後の記者会見で植田和男総裁が追加利上げについて「タカ派」的なコメントをすることも想定されます。そうなれば、円相場はさらに円高に振れる可能性もあるでしょう。

 FRBが0.50%の利上げにまで踏み込むかどうかはわかりませんが、米国は利下げ、日本は利上げ、という真逆のベクトルは当面、続きます。そのため、この先もさらなる円高傾向は続くと思われます。仮にFRBが今回、0.50%利下げすれば、日銀が据え置いても1ドル140円を割り込む展開もあり得るでしょう。

 では、円高がさらに進むと、日本株はどうなるでしょうか。