中国の原油需要はすでにピークアウトか

 JPモルガンは5日、「原油価格の下落を阻止するためにはOPECプラスは現在の生産水準を1年間維持しなければならない。日量100万バレルの追加減産が必要になる可能性もある」との見解を示している。このように、市場は「原油価格を維持するためには増産などもってのほかだ」と判断している。

 OPECプラスを窮地に追い込んでいるのは中国の原油需要に関する暗い見通しだ。

OPECプラスは窮地に追い込まれている=オーストリアのOPEC本部(写真:ロイター/アフロ)

 中国の8月の原油輸入量は日量1156万バレルと昨年8月以来最高となったが、1~8月の輸入量は前年比3.1%の減少だ。

 世界最大の独立系石油商社ビトル・グループのハーデイーCEOは9日に公開されたブルームバーグのインタビューで「中国のガソリン需要は今年または来年にピークを迎える」との見通しを示している。

 9月10日付ロイターは「中国の石油の研究者は『同国の石油製品需要は昨年にピークを迎えた後、来年にかけて年平均1.1%減少し、その後は減少幅が加速する』と予測している」と報じている。

 OPECも世界の原油需要に関する強気の姿勢を見直さざるを得なくなっている。10日に発表した月報で、世界の今年の原油需要は前年比203万バレル増だとし、8月の予想(日量211万バレル増)から引き下げた。下方修正したのは2カ月連続だ。中国の原油需要の伸びを従来の日量70万バレルから65万バレルに減らしたことが主な要因だ。

 世界の原油需要を牽引してきた中国に陰りが見えており、市場では「原油価格は今年から来年にかけて1バレル=60~70ドルの間で推移する」との予測がコンセンサスになりつつある。

 筆者が注目しているのは米モルガン・スタンレーの原油市場についての現状認識だ。9日のリポートで「2008年の世界金融危機や2020年の新型コロナウイルス禍の際と相場の動きが似ている」と指摘している。