北陸・中越は浅間山にも注目すべき

 次に北陸・中越地方について説明します。
 
 熱の移送は、PJルートである日本海沿岸のルートを通って若狭湾を回り込むように東へ延びています。

 1995年の阪神淡路大震災の後、1998年8月から1999年1月まで、長野県と岐阜県をまたぐ焼岳で火山性群発地震が起きました。

 明治時代の地震学者・大森房吉は、長野県から新潟県に流れる信濃川沿いで大地震が多いことに注目し、そこを「信濃川地震帯」と命名しています。

 私は2014年9月27日の御嶽山噴火後に「信濃川地震帯でマグニチュード6~7クラスの地震が今後数か月以内に発生する」と予測したところ、2014年11月22日に信濃川地震帯内の長野県北部の白馬村でマグニチュード6.7の地震が発生しました。

 浅間山の噴火にも注目すべきです。

 2004年9月の中規模な噴火の1か月後の10月23日に新潟県中越地震(マグニチュード6.8)が起きています。

 中越地震ではマグニチュード6クラスの地震が4回も続けて起こりました。膨大な熱エネルギーを持っている火山性地震の特徴です。2007年3月には能登半島沖でマグニチュード6.9の地震も起きています。

 東京大学名誉教授の宇佐美龍夫氏によれば、北陸・新潟地域では十数年ごとに被害を伴う浅発地震が発生していることを指摘しています。

南海トラフM9地震は起きない』(角田史雄・藤和彦著、方丈社)
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 北陸・中越地方を通り過ぎた熱エネルギーは東北地方に到達します。

 2008年6月に岩手県内陸南部地震(マグニチュード7.2)が発生しました。震源は鳥海・那須火山帯(奥羽山脈)のほぼ真ん中にある栗駒山でした。

 岩手県内陸南部地震の後も、東北地方の太平洋沿岸地域でマグニチュード6~7クラスの地震が次々と起こっていました。

 2008年7月に福島県沖でマグニチュード6.9の地震、岩手県沿岸北部でマグニチュード6.8の地震、同年9月には十勝沖でマグニチュード7.1の地震が起きました。

 私は2009年頃から「東北地方の太平洋沖に膨大な熱エネルギーがたまっているのではないか」と危惧していましたが、その悪い予感は、2011年3月の東日本大震災の発生という形で現実のものになりました。

 東北地方では1896年にも明治三陸地震(マグニチュード8.2~8.5)と陸羽地震(マグニチュード7.2)が起きています。

 東北地方では太平洋沿岸と内陸で連動して大地震が起きる傾向があります。

 私は「その周期は約30~50年間隔だ」と考えています。

 以上が、私が考える日本各地の「地震の癖」です。

 私は日本に到達する熱エネルギーが各地に移送される際に地震や火山噴火が起きると考えていますが、先述した通り、このような発想を共有する地震学者は皆無に等しいのが現状です。

 地震発生という非常に複雑な非線形現象(数学的な解析が困難なため予測がしづらい現象)を予知することは困難ですが、「熱エネルギーの移送で地震が起きる」という視点で見ていけば、数か月後の地震発生を予測できる可能性は高いと考えています。

【連載:南海トラフ地震は起きるのか】
1)プレート説は現代の「天動説」、まるで宗教…日本の地震学は50年を無駄にした
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4)地震は「プレートの移動」ではなく「熱エネルギーの伝達」で起きる!熱移送説とは
5)富士山は当面噴火しない!首都圏で巨大地震のリスクが高いところは?地図で解説
6)西日本・九州・北陸・東北…本当に危ないのはココ!熱移送説が明かす「地震の癖」

角田 史雄(つのだ ふみお)
1942年群馬県生まれ。埼玉大学名誉教授。 1973年、理学博士号取得。1982年、埼玉大学教養部教授。1995年、埼玉大学工学部教授。2006年、埼玉大学理工学研究科教授。2008年より現職。埼玉県大規模地震被害想定委員、埼玉県環境科学国際センター研究審査委員などを歴任。 主な著書に『地震の癖 いつどこで起こって、どこを通るのか?』『首都圏大震災 その予測と減災』(以上、講談社+α新書)などがあるほか、藤和彦との共著に『次の「震度7」はどこか! 熊本地震の真相は「熱移送」』(PHP 研究所)、『徹底図解 メガ地震がやってくる! 』(ビジネス社)がある。