西日本の地震でカギを握る「地塊」とは

 私は長年、関東甲信越地域を中心に山や丘陵をくまなく歩いてきました。そのフィールドワークで、地震を発生させる岩石層は、断層で切られ、多くのブロックになっていることがわかりました。

 地震の発生地点を線で結ぶと、岩層片の切れ目の面になります。

 この岩層片が「地塊」と呼ばれ、日本列島にはこのようなブロックがいくつも存在し、お互いに接しています。

『南海トラフM9地震は起きない』(角田史雄・藤和彦著、方丈社)拡大画像表示

 1970年、地質学者の藤田至則氏は「1600万年前に少なくとも4回の変動があって、これらの地塊がつくられた」と指摘しました。

 地塊の提唱者である藤田氏が講義の際に使用していた「地塊の全国分布図」の上に、1825年以降に発生したマグニチュード6~7クラスの地震をプロットしてみると、特に西日本で、被害の大きな地震は見事に各地塊の縁や境界部に位置していることがわかりました。

 熱が移送されるとその上に載っている地塊は揺れ動きます。その下の岩石層は、割れる前に曲がってしまうような、ブヨブヨした不安定なものです。この上に載るブロックは、常に動いて、境界がズレて地震を発生させます。このため地塊の端で地震が起きやすくなるのです。

 普段は目立たない地下の地塊の境界が、マグマの活動などで再び動き、大きな地震を引き起こすのです。

 最初の押し上げが強ければ、地塊同士が押し合いへし合いしているので、隣の地塊にも揺れが波及することもあります。

 マグマの活動で膨れ上がった大地にできた亀の甲羅のような割れ目は300万年前にできてから現在に至るまで変わっておらず、今も開いたままです。

 これらのブロックの境界の位置は変わらないので、境界の場所を知っていれば、地震の発生場所がわかるのです。

 地質学者である私は、地質や地塊は地域ごとに大きく異なるのが当たり前だと思っています。しかし、地塊を地震に関連させる地質学者は少なく、地震学者でそうした発想をする人は皆無に等しいと思います。