BLMで火がついた人種問題

:私は以前から「世界はリベラル化している」と述べてきました。私のいう「リベラル化」は、「誰もが自分らしく生きるべきだ」という価値観が世界を覆うことです。

 宗教や伝統に基づいた規範意識は、恋愛や結婚、あるいは教育や職業選択で「自分らしく生きる」ことを制約・否定します。日本は世界でもっとも世俗化した社会のひとつですが、「宗教的」とされるアメリカでも、伝統の名の下に個人の自由な選択を阻害することはものすごく嫌われるようになりました。

 2020年の「Black Lives Matter」運動では、白人の警官がアフリカ系アメリカ人の容疑者を窒息死させたことをきっかけに、アメリカ社会の「見えない人種差別」が批判されました。法律的には平等でも、社会に埋め込まれた暗黙の差別によって、黒人は「自分らしく生きることができない」というのです。

 どのような社会にも差別・偏見があり、それをなくしていかなくてはならないのは当然ですが、BLMの一部の活動家は、警察の予算削減や刑務所の解体を求め、「白人は生まれた時からレイシスト(人種主義者)」などの過激な主張をするようになりました。

 そうすると、これまでリベラルな政治的立場だった白人のなかにも、一方的に「レイシスト」と決めつけられたことに驚愕して、反発が生まれます。その結果、いまではトランプ派のパーティに名門大学を卒業したり、修士・博士号を持った若い白人エリートが集まるようになりました。彼ら/彼女らはインフルエンサーとしてSNSでも影響力を持ち、「保守派の恐るべき未来」と呼ばれています。