米国の上位企業の半数以上がAI(人工知能)を自社事業にとっての潜在的なリスクと認識していることが分かった。大企業の公開情報を追跡するリサーチプラットフォームである米アライズAIによると、フォーチュン500社のうち、最新の年次報告書でAIを「リスク要因」として挙げた企業は56%に達した。この割合は2022年時点の9%から大幅に増加している。
メディア・エンタメ企業の9割が懸念
英フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。この調査は、新たなテクノロジーが産業構造を一変させる可能性を示唆しているという。
フォーチュン500社の通信企業の3分の2以上、ヘルスケア、金融サービス、小売、消費財、航空宇宙の各業界の半数以上が、AIシステムが事業リスクになるとし、投資家に警告を発した。
懸念は業界によって、より強まる。例えば、大手メディア・エンターテイメント企業の90%以上が、ソフトウエア技術企業の86%が同様の見解を示している。
消費者もメディア企業がAIを活用することに抵抗感を抱いている。英オックスフォード大学のロイター・ジャーナリズム研究所(Reuters Institute for the Study of Journalism)がまとめた年次リポート「Digital News Report 2024」によると、消費者はAIによるニュースコンテンツに疑念を抱いている。
米国人の52%、英国人の63%が、主にAIで制作されたニュースに抵抗があると回答した。特に政治や戦争のような慎重を要するトピックについては不安感が強い。報道機関のニュース制作におけるAIの活用に対する懸念が世界的に高まっている。
競争力低下や財務リスクの問題
アライズAIの調査によると、企業が抱くリスクとしては、競争力の低下が挙げられている。経営陣は、他社がAIを効果的に活用することで、自社が後れを取るのではないかと懸念している。
例えば動画配信大手の米ネットフリックスは、競合他社がAIを導入することで優位に立ち、「当社の競争力や業績に悪影響を及ぼす可能性がある」と警告している。