日本の至宝に手を出すな!

 だが、日本は――買収提案に対する激しい抵抗やポイズンピル(毒薬条項)戦略などを通じて――我々の宝に手を出すなというメッセージも発信してきた。

 最高経営責任者(CEO)は一方的な買収提案を真剣に受け止めるよう義務づけられていなかった。

 法律にもベストプラクティスにもそのような記述はなく、押しの強い株主からそう強いられることもなかった。

 おまけに、世間では買い手と売り手が完全に合意した企業買収だけがうまくいくとの見方が一般的で、金融機関もそのようにアドバイスしていた。

 そうした状況を下支えする要素がすべて、昨今の様々な変化によって揺らいでいる。ACTの背中を押したのもそうした変化だった。

 日本円相場は恐らく底打ちしており、今後は円高に向かう公算が大きい。

 コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードも厳格化された。アクティビストの存在も受け入れられるようになっている。

 昨年には経済産業省が国内の事業統合を促進しようと企業買収における行動指針を改定し、真摯な買収提案にはCEOが真摯に対応するよう促した。

 証券取引所も、資本効率とバリュエーションの向上に力を入れるよう企業に求めている。