この猫は「目立たないところで気配を消しているはずなのに、どうしてわたしが見えるの?」というような不思議な顔をしてこちらを見ていました。

 姿勢を低くして、「なんて美しい猫ちゃんなの」と話しかけると、「ん!? いまなんて言ったの? も一回言ってみて」と、大きなジャンプをして近づいてくれました。

 壁の陰から片目だけ出してこちらの様子をうかがっていたので、「黒ちゃーん」と小さく呼んでみると、「なになに?」と、少しずつ前に出てきました。漆黒でツヤツヤな黒ちゃんでした。