イスラエルとハマスの対立はなぜ収束しないのか。ロシアのプーチン大統領はなぜウクライナを侵攻し続けるのか──。最新の世界情勢を読み解くには、地政学、宗教、歴史、民族、経済といった「公式」に、政党という「変数」を加えることが必要だ。
「政党を見るという“ミクロの目”を持つと、世界を見るという“マクロの目”も備えることができ、その国や地域の実情が寄り立体的に見える」と語る元外交官で著述家の山中俊之氏が語るアメリカの政党について。
※この記事は、『教養としての世界の政党』(かんき出版)より「アメリカ」部分を一部抜粋・編集したものです。
強力なロビー団体・銃規制反対の全米ライフル協会とは?
これまでの連載では、共和党・民主党における人種、移民、LGBTQ、ジェンダーについての考えの相違を見てきました。それでは、政党と支持団体の関係はどうかといえば、両党それぞれ業界とのかかわりが密接でありロビー活動も盛んです。
ロビー活動、つまり“特定の主張を持つ組織による私的な政治活動”は、決して怪しいものではありません。
日本の大企業もロビー活動というかどうかはともかく、永田町でもワシントンでも議会に働きかける活動をしていますし、「法で規制されたら事業が一発アウトになりかねない!」というテクノロジー企業が、政党とつながりを持とうとするのは当然の企業活動の一環です。
日本であれば「議員に陳情」「役所に相談」あるいは「政党と業界団体の付き合い」となりますが、米国は個人主義であるがゆえにロビイストが活躍します。
政党の結束力が緩やかで党議拘束もほとんどない。つまり個人主義だからこそ、さまざまな団体のロビイストは連邦議会議員に個別に働きかける。そうやってつながりを持ち、政治献金を行い、自分の団体に有利な政策や予算案に賛成票を投じさせようとするのです。
そんな米国のロビー活動の一つの象徴とも言えるのが、銃規制をめぐるロビー団体、全米ライフル協会(NRA)です。