地位協定に関する「日米合同委員会」、議論の中身は?

 日米には、2プラス2以外にも安全保障に関する協議の枠組みがあります。

 2プラス2に次ぐ協議機関は「日米安全保障高級事務レベル協議(Security Subcommittee : SSC)で、両国の次官クラスが参加して随時開かれています。

 その下位には「防衛協力小委員会(Subcommittee for Defense Cooperation : SDC)が設置されています。この場はより実務的な局長クラスの会合で、日本側から外務省北米局長や防衛省防衛政策局長、および自衛隊の統合幕僚監部の代表が出席。米国側からは国務次官補や国防次官補、在日米軍・インド太平洋軍・駐日米国大使館の代表らが参加します。

 通常の流れとしては、2プラス2が開かれる前に局長クラスのSDC、次官クラスのSSCが何度か開かれ、自衛隊と米軍の共同対処方針などの細目を煮詰めています。

 一方、こうした安保協議の場とは別に、両国は日米合同委員会(Joint Committee : JC)も定期的に開いています。「日米地位協定の実施に関する協議」(防衛白書)を行う場で、在日米軍が日本国内で活動しやすいように主に米側の意向を聴き、その実現に向けて課題や調整を行うとされています。

 日米合同委員会の日本側代表は外務省北米局長で、代表代理として法務省、農林水産省、財務省の幹部らが名を連ねています。米側の代表は在日米軍司令部副司令官。代表代理も6人のうち5人が米軍幹部です。政治家は参加せず、日本の官僚と在日米軍の幹部が顔をそろえる形になっています。

 委員会の下には、26分科会と9部会を設置。分科会は、気象、周波数、通信、刑事裁判、民事裁判、航空機騒音、電波障害、施設、財務、環境など軍の活動に関係のあるあらゆる分野を網羅しており、それぞれ担当省庁の幹部が対応することになっています。

 この委員会は原則として月2回、東京都港区南麻布の米軍施設「ニュー山王ホテル」などで開かれています。会合は非公開で、情報公開で議事録を請求しても公開されません。非開示を不服として起こされた訴訟では、1960年に開かれた合同委員会の第1回会合において、日米双方の合意がない限り議事録を公開しないという取り決めが行われていたことも判明しました。

 こうしたことから、日米のさまざまな懸案事項は日米合同委員会の場で実質的に合意され、重要事項が国会を通さず決まっているとの指摘もあります。そうした声を日本政府は一蹴していますが、情報が公開されない限り、「日米合同委員会は日本に対する指示機関」「合同委員会は闇」といった見方は消えないでしょう。

 多くの首脳会議や閣僚級会合がそうであるように、日米の2プラス2の合意も次官級や局長級の協議体、日米合同委員会などでの折衝を経た結果です。したがって、それぞれの場で話し合われている事柄と合意に至るプロセスにも目を向けていないと、日米安保の真の姿はなかなか見えてこないのかもしれません。

フロントラインプレス
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