この事件はベトナムで大きく報道されて、人々の中国人に対する恐怖感を一層煽ることになった。当局は国境管理に力を入れているが、山岳地帯での密入国を完全に防ぐことは難しい。

 失業率の高まりによって中国社会が動揺し始めた。中国人は自己主張が強く勝手な行動に出やすいが、歴代の王朝、そして中国共産党はそんな彼らを強い力によって押さえつけてきた。しかしその力は東南アジアには及ばない。その結果として、中国国内が乱れ始めると影響が真っ先に陸続きの東南アジアに現れる。

 話は変わるが、この7月にタイのバンコクの街頭に中国のあるコンサルタント会社が、インドネシア、バヌアツ、カンボジア、トルコのパスポートを中国人に日本円で65万~324万円で販売する、との大きな看板を掲げた。国によっては国籍を販売しているところもあり、完全に非合法とは言えないようだが、あまりに非常識な行為である。看板はすぐにタイの当局によって撤去された。看板を出した中国人女性は観光ビザで入国していたために、不法就労の容疑で逮捕された。

 中国人はお金のためならどんなことでもすると言われるが、このような行為を中国国内で行うことはないだろう。中国人は東南アジアを舐めている。

 中国人は困窮すると、まず警察力が弱い東南アジアで悪事を働く。東南アジア大陸部は中国の治安のカナリアと言っても良い。失業率の高まりによって、中国国内の治安が乱れ始めた。その綻びが一足先にベトナム、カンボジア、タイで噴出し始めている。