原発21基が廃炉に、12基が再稼働
こうした組織改革と同時並行で、原発の設置基準を見直す動きも進みました。そして2012年6月に原発の新規制基準を策定。事故前よりかなり厳しい基準で原発稼働の是非を審査していくことになったのです。
新しい基準にはいくつかの大きな特徴があります。
1つは、重大事故対策を法令による規制の対象としたことです。このため、「原子炉等規制法」を改正し、重大事故によって放射性物質を原子力事業所の外へ放出させないことを明記しました。
2つ目は「バックフィット制度」の導入です。これは最新の知見を常に規制基準に取り入れ、すでに許可を得た施設であっても最新の新基準に適合しなければならないというルールです。いわば、終わりなき断続的な安全対策を事業者に求めたものと言えるでしょう。
3つ目は、規制検査制度の改正です。これにより、原子力規制委員会は、いつでも、どこでも、何でもチェックができるようになりました。
新しい規制基準は、地震や津波、火山噴火、竜巻といった自然災害からのダメージを減じるため、災害の種別ごとに耐震補強や移設などを求めることが眼目です。さらに原子力防災を徹底するため、非常用電源の確保や消火設備の増強、緊急時に原子炉内の圧力を制御したり水素濃度を縮減したりする特別な機器などが必要とされました。
こうした対策を講じるには膨大な費用がかかります。このため、福島第一原発の事故後に停止していた原発のなかには、再稼働を目指さず、そのまま廃炉とするケースも出てきました。原発事故後、新規制基準への対応が技術的に困難なことや耐震補強工事の負担に経済的に耐えられないことなどから、廃炉になった原発は21基を数えます。
・東京電力 福島第一原発の6基/福島第二原発の4基(以上、福島県)
・関西電力 美浜原発1号機、2号機/大飯原発1号機、2号機(以上、福井県)
・東北電力 女川原発1号機(宮城県)
・中国電力 島根原発1号機(島根県)
・四国電力 伊方原発1号機、2号機(愛媛県)
・九州電力 玄海原発1号機、2号機(佐賀県)
・日本原電 敦賀原発1号機(福井県)
もっとも、原子力規制委員会は、原発の再稼働を認めないための組織ではありません。厳格に審査を行いますが、審査にパスし、再稼働した原発も12基あります。
・九州電力 川内原発1号機、2号機(鹿児島県)/玄海原発3号機、4号機(佐賀県)
・四国電力 伊方原発3号機(愛媛県)
・関西電力 高浜原発1号機〜4号機/大飯原発3号機、4号機/美浜原発3号機(以上、福井県)
このほか、東北電力の女川原発2号機(宮城県)など5基は新規制基準に合格しており、近く実際に再稼働する見込みです。