原発の「利用と規制の分離」

 では、原子力規制委員会とはどのような組織なのでしょうか。

 設立のきっかけとなったのは、2011年3月11日の東日本大震災に伴って発生した東京電力福島第一原発の事故です。この事故は、原発事故の国際基準で最も深刻な「レベル7」となり、溶け落ちた核燃料(デブリ)は、今も地中から取り出すめどが立っていません。

 そんな過酷事故を招いた要因の1つとして「原発に対する審査が甘かったからだ」という反省が事故後に生まれます。

図:フロントラインプレス作成
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 福島第一原発の事故前、日本の原発を規制する役割は、経済産業省の内部に置かれた「原子力安全・保安院」が担っていました。一方、エネルギー政策を統轄する経産省は事故前も現在も「原子力の利用・推進」が大きな役割です。

 つまり、事故前の原発規制は、原発を推進する側が担っていたわけです。これではチェックがうまく機能しない懸念が拭えません。

 事故後、この仕組みを変え、原発の審査機能を経産省から切り離すことになりました。「利用と規制の分離」です。

 そして2012年9月、原発の規制部門として原子力規制委員会が誕生しました。新組織は環境省に置かれ、委員会は委員長1人、委員4人の計5人。任命には国会の同意が必要です。また、事務局として「原子力規制庁」が置かれました。同庁の職員は2024年4月現在、技術系840人、事務系240人。合わせて1080人が働いています。

 原子力規制委員会は、いわゆる「3条委員会」です。

 3条委員会とは、国家行政組織法第3条第2項に規定された独立委員会で、上級機関(例えば、設置する府省の大臣)の指揮監督を受けず、独立して権限を行使することが保障されている合議制の機関のことです。ほかの3条委員会としては、公正取引委員会や国家公安委員会(いずれも内閣府)、運輸安全委員会(国土交通省)、中央労働委員会(厚生労働省)があります。