旅行に行くため買い主とともに飛行機に乗るペット。韓国・ソウルの金浦空港にて(写真:Yonhap News Agency/共同通信イメージズ 「聯合ニュース」)旅行に行くため飼い主とともに飛行機に乗るペット。韓国・ソウルの金浦空港にて(写真:Yonhap News Agency/共同通信イメージズ )

(小野原 遼成:ジャーナリスト)

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 韓国の出生率低下に歯止めがかからない。今年2月の政府発表では、昨年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)が0.72 (暫定値)と前年の0.78を下回り、過去最低を更新した。

 子どもの教育費や住宅価格の高騰といった経済的理由、晩婚化など子どもを持つことを放棄する背景はさまざまだが、確実に拡大していることがある。それは「子どもの代わりにペットを育てる」というライフスタイルだ。

 ペットなら受験競争も子ども部屋も必要なく、少ない負担感で家族愛を育めるというわけだ。

 高所得層では、惜しみなくお金を費やす“セレブ犬”も続出している。政府は最重要政策の一つとして少子化対策に取り組むが、ペットショップに「家族」を求める人々の波は収まるところを知らない状況だ。

さらに進む「国家消滅時計」

 2012年に1.30だった韓国の出生率は2018年に0.98と1を割り込み、その後は減少を続けている。

 現地駐在の日本特派員らがウォッチする数字には大統領支持率や電機大手サムスン電子の決算などがあるが、最近は出生率がどこまで下がるかについての関心が高く、今年2月も「韓国の出生率が衝撃の0.72に…日本の6割弱」(FNNプライムオンライン)、「日本上回る『超少子化』」(朝日新聞デジタル)などと注目を集めた。

 韓国メディアも「国家消滅時計がさらに進んだ」(朝鮮日報)と大きく報じている。

 専門家からは、もはや出生率の引き上げよりも「学校の廃校や(徴兵制に基づく)軍隊の削減、老人扶養負担の急増など、少子化の影響による『ディストピア』」社会への対応を急ぐべきだとの声まで上がる。

 昨年10~12月に限ると出生率は0.65まで低下しており、韓国政府の受け止めも深刻だ。