タカ派のホープとしての「コバホーク」

 しかし、不確定要素も多い。永田町では現状、“進次郎待望論”が必ずしも大勢とは言えない状況なのだ。強力なライバルが出現しつつあるのが、その大きな理由だ。

自民党関係者「いま若手議員の間で総裁候補として名前が挙がっているのは2人です。一人は進次郎さん、もう一人は、前の経済安全保障担当大臣の小林鷹之議員です」

 小林鷹之は2012年に自民党が政権を奪還した衆院選挙で初当選した。まだ49歳で本人も若手の部類に属するが、経済安全保障や外交、防衛などの分野における政策通として知られ、党内きってのホープと見なされている。

 派閥は二階派に所属していたが、3年前の総裁選では故・安倍晋三元総理が推した高市早苗現経済安全保障担当大臣(63)の推薦人になるなど政治理念としては「右寄り」、もしくは「タカ派」的な性格が強い。このため若手議員の中でも特に旧安倍派の支持が集まっている。この他、経済安全保障政策に力を入れる甘利明前自民党幹事長(74)らも小林の支持に回る可能性がある。

 名前をモジって自民党内では「コバホーク(鷹のHAWKから)」と呼ばれる小林について、別の自民党関係者は総裁選で台風の目となり得ると見ている。

自民党関係者「(小林は)若手で手垢がついていない分だけ、(出馬すれば)党が変わったというイメージは強くなる。後は知名度が短期間でどれぐらい広がるかだね」

自民党議員「コバホークと進次郎が揃って出たら、どっちを推すか悩むね」

 進次郎サイドにとっては若手が一致して推してくれることが理想なのだろうが、すでに安倍派の若手を中心に小林への支持が広がりつつあり、そういった構図が描けない可能性がある。むしろ旧安倍派の若手がこぞって小林を推すことになれば、それに追随する議員も出てくるであろう。進次郎vs.コバホークのどちらが若手の支持を集めるか。場合によっては拮抗することも予想される。

 小林自身、報道陣の取材に対して「いつかは国の舵取りを担えるような立場になりたいと。そういう人間になれればということで日々研鑽を積んでいる」と意欲を隠さないため、進次郎を支持するグループも警戒を強めている。

 筆者は、進次郎と小林両人の動きが表面化するのは今月下旬以降と予測する。いまは両陣営とも、立候補に必要な推薦人の確保や目玉政策をどうするかといった“弾込め”に専念している時期であろう。

 思わぬ同世代の強敵の出現――。かつて高校球児だった進次郎は、この「熱い夏」をどう乗り切るのか。 (敬称略)

永田象山
(ながたしょうざん) 政治ジャーナリスト

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