慌てて相続放棄の申し立て
叔父は施設に100万円単位の未払い金を残して亡くなったらしいことが分かり、慌てて司法書士に相談して家庭裁判所に相続放棄の申し立てをしたという。
「叔父には申し訳ないけれど、父からそれほど多くの遺産を受け継いだわけではないし、我が家の家計に叔父の借金を穴埋めする余裕はなかった」
男性にとっては正直、迷惑以外の何物でもなかったのだろう。
ただ、既に火葬を済ませていた叔父の遺骨をそのままにしておくわけにはいかず、祖父母が眠る田舎の共同墓地に納めた。施設の人からは、「遺骨を引き取ってもらえただけでもありがたい」と感謝されたという。
今の相続人世代は、相続の機会が増える
相続を扱う大手金融機関の専門家は、近年、男性のように生前ほとんど交流のなかった親族の相続に直面するケースが目立つと話す。
「現在の後期高齢者は相対的にきょうだいの数が多かった。中には未婚の人も一定数いるので、その人が亡くなった時には甥や姪に当たる人が相続人を務めることになる。少子化で相続の数は減少すると言われているが、こうしたことから、今の相続人世代は逆に相続を体験する機会が増えている」
中には相続人と生前全く交流がなかったり、故人が負債を抱えていたりするケースも少なくない。この専門家は、「近年相続放棄が急増している要因の1つに、こうした“疎遠なおじ・おば”からの相続の増加がある」と指摘する。