過剰流動性はもはや限界
澤上:根拠は、バブルを生み出している3つ要素が、どれも限界にきているということです。
1つは、過剰流動性です。そもそも、過剰流動性は1971年のニクソンショックあたりから始まり、これまでに大きく2回、金融引き締めのタイミングがありましたが、リーマン・ショックやコロナ禍をへて、もはや誰も過剰流動性が危険だということ言わなくなりました。かつて、米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン議長は「根拠なき熱狂」と言いましたが、ブレーキをかけることはなく、それが今まで続いてきてしまった。
そして2つ目が、相場を押し上げてきた年金マネーの膨張も、そろそろ限界が来ているということです。資産運用会社はこれまで、巨大な年金マネーを獲得しようと、次々とベンチマーク(運用の指標とする基準)やシャープレシオ(投資効率の良さを数値化した指標)など成績判断尺度を開発し、毎年の運用成績をアピールしてきました。
資産運用会社の多くは、年金マネーを獲得するためのマーケティング会社に成り下がってしまった。本来、年金は何十年という長期で運用すべきものなのに、短期の運用成績を重視するようになり、マーケティングで集めた年金マネーで債券や株式を買いまくり相場を押し上げてきたのです。
ただ、
3つ目が、「金利ゼロ」の世界がいよいよ終わるということです。これまではゼロ金利で個人も企業も安易にカネを借りてきました。その結果、世界の債務残高はGDP(国内総生産)比で336%。2021年に記録したピーク時の362%を下回っているものの、地球の経済の3倍以上の借金を抱えていることになります。過去10年で100兆ドルも積み上がっています。
それに対し、世界的なインフレ圧力で金利は上昇してきています。となると、ゼロ金利時代に積み上げた借金(金融契約)は、いずれも大きな負担となっていくわけです。
こんな異常な金融緩和バブルは長続きするわけがありません。実際、インフレが起きているのは、経済合理性が働き始めたと見るべきです。すでに金利が上がり始めており、ゼロ金利で積み上げた借金は返せなくなります。資産バブルがはじけたら、どうやって膨大な借金を返したらいいのか。金利上昇ですでに尻に火がつき始めていると考えたほうがいい。
──バブルはいつ弾けるのでしょうか?