親子留学中にもしも子どもが「日本に帰りたい」と言ったら……(写真はイメージ ©︎Alistair Berg)

 2021年6月に現地のコーディネーターに相談を開始し、約1年後にカナダへ飛んだ高橋さん親子。「実に軽やかに、悪く言えば深く考えずに決めた」と振り返る。

 WEBメディア「シンクロナス」で人気のコンテンツ『母子ふたりの親子留学』では、実際にかかる生活費や留学地域の選び方、カナダのパブリックスクールの様子など、経験者だからこそわかる情報を、編集者らしく情報を精査しながら発信している。今回は高橋さんに、母子留学という大きな決断ができた理由について話を聞いた。

(聞き手・文=吉田彰子)

決断は「軽やかに」。ダメなら1年以内で帰るつもりだった

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――日本を出て海外に親子で移住するとは、かなり大きな決断だと思うのですが、どういう気持ちで決められたのですか?

高橋香奈子さん(以下、敬称略):よく言えば軽やかに、悪く言えば深く考えずに(笑)、決めました。

 中学受験をやめて子供の特性を見つめなおしたときに、息子は案外誰とでも仲良くなれるし、新しい学校へ行っても馴染めそうという安心感もあったので、気軽にチャレンジできたのかなと思います。

 私自身も周囲に流されて中学受験へ向かっていましたが、立ち止まって考えたとき、子供に将来日本の有名大学を出てもらうことを最終的に望んでいないという思いに至ったからこそ、決断ができたのかもしれません。

 まず行ってみてダメだったら、その時考えればいいかな、と(笑)。まだ小学校や中学校だったら取り返しがつく年齢だと思ったので、それよりもいろんな経験をさせてあげる方が今は大事だと思ったんです。

 

――「行ってみてダメだったら」とありましたが、「ダメ」だと想像していたのはどんなことですか?

高橋:やはり、息子の気持ちですね。

 「やっぱり帰りたい」「全然楽しくない」「友達もできないし英語もわからない」「日本が良かった」と息子が思ったら、一年も経たずに帰ろうと決めていました。

 実際には、英語があまり分からない状態ではあったものの、カナダの自由な雰囲気の学生生活をすぐに気に入り、「カナダに連れてきてくれてありがとう」という手紙をもらったんです。海外での新たな生活は慣れていないこともたくさんありましたが、息子の心配がなかったことにはとても助けられました。

カナダへ発つときの荷物。特大ケース5つに二人分の荷物を収めた

親子留学は決して富裕層だけではない。教育の新しい選択肢のひとつに

――コンテンツ『母子ふたりの親子留学』では、どんなことを伝えたていきたいですか?

高橋:子供の留学に親が帯同するというと、「一部の富裕層しかできないことなんでしょ」と言われることが多いんです。もちろん、現実的にお金がかかるのは確かです。バンクーバーの家賃は東京と同じかそれ以上に高いですね。しかし、ほかの州や郊外へ行くと約半分ですむところもあります。

 ここカナダで、親子留学をしているさまざまな日本人(もちろん日本人以外にも)と出会いましたが、来ている親子は必ずしも富裕層や芸能人のような人たちではありません。私のような「普通の家庭」の親子留学も増えています。

 州にもよりますが、カナダは親が学校に通っていると、子供の学費が無料になるシステムがあるので、そのために親御さん自身も学校に通っている人もいます。また、私と同じようにリモートで日本の仕事を続けながら夫や家族からの仕送りはもらわず自力でやっている人、祖父母からの教育資金贈与や貯蓄から生活費や教育費を捻出している人、さまざまです。

 また、コンテンツ内でも書いているのですが、何年か子供を海外に行かせることで、帰国子女枠で日本のいい大学に入れるのでは?という質問もよく受けます。

 帰国子女枠のための留学を希望している人がいるなら、それは否定しませんが、高い英語力を身につけ、カナダにいながら日本語を高いレベルで維持し続けるのはかなり努力が必要です。なので、簡単にはおすすめできないというのが私の意見です。

 それよりも、「子供が小さいうちにいろいろな経験させたい」「海外体験をさせてあげたい」「うまくいけば、英語がペラペラになってくれたらうれしい」「将来の可能性を広げたてあげたい」と思っている人には、新しいひとつの選択肢として興味をもってもらえたらいいなと思います。

「慣れない海外の暮らしは大変なこともありますが、自然に癒されています」と高橋さん