最近、おじさんが意外な場所で働く姿を見かける。給料が上がらない、本当に年金もらえるの? AIに仕事を奪われる…! 将来の不安から副業をはじめる中高年男性が増えているのだ。
おじさんたちはどんな副業をしているのか、どれくらい稼いでいるのか、あるいは全く稼げていないのか。組織をはみ出し、副業をはじめる全力おじさんの姿をより深くリポートする。(若月澪子:フリーライター)
スポットワークは人手不足の見本市
人手不足が、日本のあらゆる職場でヒビ割れを起こしている。このスキマを埋めようと外国籍の人が投入されているが、まだまだ足りない。
今、人手が足りない職場は、アプリで「助っ人」を集めている。スポットワークである。
スポットワークとは、「タイミー」や「シェアフル」などのアルバイトアプリに掲載された、一回限りの数時間だけのスキマバイトに入るという新しい働き方だ。求人数、登録者数ともに拡大を続けており、「多様な働き方」の一つになりつつある。
業界最大手「タイミー」のアプリで東京都内の求人を見ると、飲食店をはじめ、フードデリバリー、物流倉庫の作業、配送作業、コンビニのレジ、保育士、美容師、介護施設など、まるで人手不足業界の見本市だ。
ただ、応募条件が「経験者のみ」「有資格者のみ」「社員希望のみ」「長期希望のみ」という求人が多く、「誰でもいいから来て!」というワケでもなさそう。「スポットをきっかけに、長く働いてくれる人を確保したい」という発注側の思惑が垣間見える。
いずれも時給は最低賃金かプラスαくらい。時給1300円あれば高いほう。それでも一つの時間に何人も募集するわけではない。とりあえず1人来てくれればいいのだ。
「着物姿で3年以内に3年以上、畳の日本料理店で働いた経験のある方のみ応募可」って、そんなレア人材を強気の低賃金で募集するあたりが、マッチングアプリの妙である。
タイミーの登録者は、大学生や会社員、フリーターなど20~30代が半分以上を占めるという。しかし、今後は役職定年や定年退職を迎えるミドルシニアの参入も期待されている。
スポットワークはおじさん(おばさん)でも勤まるのか。
筆者はスポットワークのアプリから「初心者歓迎」という回転寿司の求人にエントリーしてみた。日曜日の午前11時から午後3時、時給は東京都の最低賃金を17円だけ上回る1130円である。