ウクライナの非対称戦が変えた海戦

 ウクライナ戦争における無人機の広範な活用とその影響力は際立っており、「無人機とAIを使った戦闘が、次の戦争の姿になる」と指摘されている。

 なかでも、黒海におけるウクライナの対艦ミサイルや高速無人水上艇がロシア黒海艦隊の高価値目標を破壊することに成功したことで、海戦の性格が変わりつつある。 

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻時、ロシア黒海艦隊は、スラバ級巡洋艦1隻、駆逐艦1隻、フリゲイト2隻 揚陸艦13隻(他の艦隊からの増派を含む)、その他コルベットなど、約40隻とキロ級潜水艦7隻を保有していた。

 一方、ウクライナ海軍はフリゲイト1隻、コルベット1隻、その他揚陸艇など僅少で、ロシア黒海艦隊に対し極めて劣勢であった。

 2014年のロシアによるクリミア半島併合に際し、多くの艦艇を喪失したからである。

 圧倒的な海上優勢にあるロシア海軍は、ウクライナ沿岸部の封鎖・威圧行動を開始し、オデッサ港などからの穀物輸出を困難にした。

 この情勢に大きな一撃を加えたのが、2022年4月13日、ウクライナのネプチューン対艦ミサイルによって、ロシア黒海艦隊旗艦スラバ級巡洋艦「モスクワ」を攻撃、撃沈させたことである。

 爾来、同艦隊の活動に対する影響力・圧力を強めた。

 その後、ウクライナは高速無人水上艇を繰り出し、2024年2月にはロシアのミサイル艇と大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」を撃沈させた。

 また、ウクライナ国防省情報総局は2023年12月、前記と同型の大型揚陸艦をミサイルで破壊したと発表している。

 2022年2月に戦争が始まって以来、この戦争でロシアは少なくとも15隻の艦艇が沈没、あるいは航行不能などの深刻な被害を受けた。

 黒海艦隊は、侵攻前の水上艦艇40隻のうち、約3分の1を失ったと推定されている。

 これにより、ウクライナは黒海艦隊による海上封鎖を破り、飢餓に直面するアフリカなどへの穀物輸出を可能とした。

 加えて、今年に入り、米国や英国などが、供与した長射程ミサイルなどによるロシア領内攻撃を容認する政策変更を行ったこともあり、米国製のATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)が黒海艦隊司令部のあるセヴァストポリの攻撃などに使用されている。

 そのため、ウクライナに向けて巡航ミサイルを発射できるほぼすべての艦艇を差し迫った危険から退避させ、アゾフ海やノヴォロシースク海軍基地へ移動させている。

 しかし、そこでも、高速無人水上艇の攻撃を受ける羽目に陥っている。

 現在、ロシアとの地上戦で苦戦しているウクライナは、海上における無人機戦では優位に立っている。

 その成果は、主として対艦ミサイルと高度に機動性のある最新式の高速無人水上艇の複合的手段によるものである。

 換言すると、ロシアはウクライナの高速無人水上艇と対艦ミサイルの使用によって引き起こされた海上での非対称戦から生じるすべての困難を克服することができていない。

 このことは、敵との戦力の不均衡を克服し防衛力を強化する無人システムやミサイルを継続的かつ迅速に改良することが、ウクライナとロシア以外の軍隊にとっても重大な教訓となっているのである。