自刃してまだ見ぬ部下を守る「国家老」の魂

 6月6日、鹿児島簡裁で証言台に立った本田警視長は「野川本部長の不正告発」と、はっきり名指しで、叩き上げの自分と職位が並んだキャリア、一回り若い野川氏を糾弾しました。

「本田文書」より明確に踏み込んだ内容です。

 その「カミングアウト」の動機として、4月8日に「第一の公益通報警官」藤井光樹巡査長の逮捕を本田警視長が知ったことがあると、私は考えます。

 御用メディアの垂れ流し情報だけでは、藤井氏は動機不明ながら「警察内部の情報を自分の利便のため、第三者の会社社長に横流しした悪い奴」として、社会の注目を集めることなく、圧殺されてしまったでしょう。

 この同じ時点で、本田文書はライターの小笠原淳氏に送付されており、さらにHunter編集部のパソコンで鹿児島県警に発見されているわけです。

 そして、本田さんは自宅が家宅捜索を受けたことで自殺を図った。

 しかしその後、藤井氏が逮捕、起訴された事実を知り、いま本田さんは、すぐに自殺をしようとは考えていないと、私は確信します。

「野川本部長・直接の指揮のもとで、不正捜査が行われていた」と、あの場で証言することは、闇に葬られかけていた「藤井元巡査長」に、不正警官の汚名を着せることなく、公益通報者としての正当な名誉を回復することになる・・・。

 寡黙ながら熟慮し、決然と行動する本田氏が、この程度のことを考えていないわけがありません。

 いわば、自身の体を張って、直接面識のない、しかし県警の中で正義をもって筋道を通し、仕事を失い社会的信頼も喪失しかけている「まだ見ぬ一部下」である藤井氏を、しっかりと守っている。